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第1章⑭<R18> [「うたかたごころ」第1章]
「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。
<第1章⑭の登場人物>
吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…16歳。主人公。
かつては吉川(きっかわ)の姫だった
前田慶次♂…17歳。愛子の幼馴染。愛子と交際中。
※髪型は後ろでひとつに縛ってはいるが、肩にかかる程度の長さ
毛利元就♂…20歳。5年前に元服した、松寿丸(しょうじゅまる)
吉川舞子(きっかわ まいこ)♀…安芸吉川の姫。愛子の双子の姉。
元就の正室となった
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何故、元就は裸になろうとしないのか。
何故、舞姫に後ろを向かせるのか。
何故、憎むような目で、今日初めて会った己を見るのか。
清涼感溢れた、非常に頭の切れる、貴族のような佇まいの青年。
毛利元就という人物は、界隈のおなごが熱い視線を送るほどの美男子で、そんな男の正室になれる己の運命を、舞姫は密かに誇っていた。
しかし、実際はどうだ。臥所における獣のような振る舞いは、貴族のような品など欠片もない。それどころか、己を睨み下す眼は、殺しに飢えた殺し屋を凌ぐほどの冷徹さ。これは、人の血の通った生身の健康な男子が、おなごを抱く形相ではない。
── まさか……衆道……。
床の上で丸裸となった新妻が、夫に向かって下半身を突き出しているにも関わらず、そんなあられもない状態の自分を前にして、元就はいっこうに肌に触れようとしない。若い乳房も男を誘うように揺れているが、年頃のはずの夫は何故か見向きもせず、舞姫の裸の胸は放置されたまま。かと言って、秘所を摩ってくる気配もなく、それどころか、まるでその箇所を避けるように、腰骨に女子のような細い指を引っ掛けて支えているのみ。
── 冗談じゃないわ。
皆が羨望した毛利元就の妻の座を手に入れて、その実、夫が衆道だったなんて、とんだ笑い者だ。それに、このまま子供を授かる機会を与えられなかったら……。
── 困るわ。絶対に一度は御種を頂戴しないと……。
焦った舞姫は、懇親の力を振り絞って仰向けになり、元就の下半身に衣の上から飛び付いた。突然の舞姫の行動に驚いた元就は、自分の腰に絡みついた舞姫を睨み下ろす。
「何をしておる。気でも違うたか」
「私は貴方様の妻。夫婦(めおと)の契りを交わしとうござりまする」
「ならば黙って前を向いておれ」
「御種を頂戴するだけの交わりなど、夫婦とは言えませぬ。舞はお夜伽をしとうございます。身だけにあらず、心も貴方様と交わりとうございます。どうかお心を下さいませ」
そう喰らいついた舞姫は、突然元就の衣の中に顔を突っ込んだ。元就は慌てて力任せに舞姫の頭を掴み出したが、裸の女体が絡みついてもなお、無反応のままだった夫の男性部分を認め、舞姫は不審が確信に変わったとでも言いたげな、微妙な表情を見せた。
「……おのれ……ふしだらなおなごよ!」
「夫に抱かれたいと望むはおなごの心にございます。貴方様のお心もどうかこの舞に……」
「黙れ!」
捲くし立てる舞姫の顔を、元就は遂に平手で打った。
まさか新婚初夜に、夫となる男から手をあげられるなどと、思いもしなかった舞姫は、あまりの仕打ちに返す言葉を失う。
「喋らせておけば、心、心と。我の心だと? そんな物、我は持ち合わせておらぬわ!」
裸の新妻を前に、まだ柔らかいまま、全く反応を示さない元就の下半身。それを、舞姫の目から隠すように、元就は肌蹴た前を直す。しかし、おなごとしての矜持に傷をつけられて開き直った舞姫は、打たれた頬に己の手を添えて元就を睨み上げた。
「はやり……男色の方にござりますか」
「フン、くだらぬ。己に靡(なび)かぬ男など、この世にいるはずがないとでも思うておるのか。とんだ自惚れよ」
そこまで言われて、舞姫は流石に呆れを露にし、もはやこれまで、と衣を纏う。
「ならば、単刀直入にお尋ねいたします。貴方様は何ゆえ、私をそれほどまでにお嫌いあそばすのでございますか。私はお恨みを抱かれるようなことは、何もしておりませぬ」
その言葉に、今度は元就が嘲笑を浮かべ、
「それは幸せなことよ。そなたの人生のために犠牲になった者にも、聞かせてやるがよい」
そう言い捨てて部屋を出て行こうと、踵を返す。その皮肉めいた言い方に、
「ならば率直にお聞かせ下さい。舞の何がお気に召さぬのでございますか。私と貴方様は夫婦となり、肉親となったのでございます。同じ家に生きる私に隠し事をなされるなど……。これでは、舞も、何より貴方様も、苦しいだけにございます」
舞姫は涙を浮かべて言い募った。その様子に元就は、まるで可愛そうな物を見るように、それでいて馬鹿にしたような眼で、舞姫を振り返った。
「そなたに隠し事をしておる肉親とは、我の事か」
意外な言葉を返され、舞姫は怪訝な表情を浮かべて元就を見上げた。その、無知を晒した、どこかあどけない表情が、かつての愛姫に少しだけ重なり、元就は僅かに熱い愛おしさを体に感じる。と、同時に、舞姫の無知への嫌悪から、吐き気にも似た憎悪がこみ上げ、元就は思わず顔をしかめて、彼女に背を向けた。
「フン、その顔を見続けながら、よくもまぁそなたの肉親とやらは、これまで平然と暮らしておったものよ」
その言葉に、どういう意味か、と、舞姫が尋ねるよりも僅かに早く、
「ひとつ教えてやろう。肉親の間柄で隠し事はならぬと申しておるが、その訓示をそなたに植えつけた肉親こそ、そなたの目を曇らせておるのよ。無知とは真、愚かなことよ」
元就は肩越しに、そう重ねて言い放った。そして、
「まぁ、そなたもその肉親の子。身内に隠し事をしたがる血は、しっかりと受け継いでいるということか」
そう言い捨てた元就は、今度こそ部屋を出てぴしゃりと襖を閉めた。
「今日は、ありがとう」
施設に戻り、部屋の前まで送ってきた慶次に、愛子は恥ずかしそうにはにかみながら、繋いでいた手を、そっと慶次から離した。
部屋に入り、明かりをつけ、じゃあね、と一度振り返った愛子に、
「うん、こっちこそ、今日は何か色々ごめんね。お休み……」
と、慶次は片手を挙げて踵を返す。しかし、突然立ち止まって慌てて引き返した慶次は、見送っていた愛子が閉めかけたドアを、まるで抉じ開けるように、待った、と抑えた。
「…………」
「ど、どうしたの?」
真っ赤な顔をして、扉を押し開けたまま何も言わない慶次に、愛子は驚いて声をかける。
すると、慶次は同じ姿勢のまま、さきほど消灯時間を迎えて既に薄暗くなっている周囲を見回し、愛子にだけ届くように、低い声音でそっと尋ねた。
「……部屋……入って……いい、かな?」
「……え?」
この時間から彼氏を自分の部屋に入れることへ、何となく抵抗を感じているらしい愛子の様子に、慶次は思い切って愛子の肩を押して部屋に入り、扉を閉めて鍵をかけた。
「慶ちゃん……、あの……」
「ごめん……、ホントごめん……。でも、好きなんだ。本当に……」
思いつめた表情の中、僅かに情欲を覗かせてにじり寄る慶次に、愛子は思わず後ずさりする。それでも慶次は一歩ずつ愛子に近づいて来る為、ベッドの縁に足が当たり、愛子はこれ以上、下がれなくなった。そんな愛子の腕を強く掴んで引き寄せた慶次は、そのままベッドへ押し倒す。そして、覆うように愛子の上に倒れこむと、慶次は耳元で低く囁いた。
「ちゃんと……避妊する……。だから……しよう」
「え……? ちょっ……」
押し倒されて驚いた愛子は、何とか慶次の体を押し戻そうと、彼の肩を強く押した。しかし、がっちりとした慶次の体を、細腕でどうにかできるはずもなく、愛子は逃れようと身をくねらせる。が、それが逆に慶次を煽ったらしく、彼の呼吸が段々と荒くなってきた。
そのうちに、愛子の背をがっしりと抱きしめていた腕が、ゆっくりと動き出して背を大きく摩りだし、それが徐々に腰のほうへと下降していく。そしてその手に合わせるように、慶次の唇が愛子の耳たぶ、首筋、首元へと、肌を啄ばみながら滑り落ちていく。
「慶ちゃ……」
愛子の顔をくすぐる、慶次の豊かな髪。
背の高い慶次を、こんな風に見下ろすことになるとは、愛子は混乱の中、何故かそんなことを思った。胸元では、彼の舌が、愛子の白い肌をくすぐっている。
そんな本能を露にした慶次の行為に、愛子は自分の秘所から咽に向かって、何かが駆け上がっていくのを感じた。
不意に腰を撫でていた慶次の手が、そのまま愛子の着ていたプルオーバーパーカーの中に入ってくる。そしてそのままキャミソールをたくし上げ、肌を直に撫で始めた。
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