大和ごころ
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第4章⑪ [「うたかたごころ」第4章]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第4章⑪の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
                    かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 毛利元就♂…29歳。幼い頃、初恋の相手の愛子と結婚の約束をしていた。 
         死んだと思っていた愛子と、20年ぶりの再会を果たす
 伊達政宗♂…25歳。元親から愛子のことを頼まれ、西軍から守ることに。
         佐助の話と、本人との会話から、愛子の秘密に気付いた
 真田幸村♂…23歳。愛子の秘密を知らないまま、愛子を守ると決断。
         しかし、毛利と離縁した舞姫と、政略結婚を提案される
 前田慶次♂…26歳。愛子の幼馴染。愛子と交際していたが破局。
         フリーター。今は島津の喫茶店で働いている
        ※髪型は後ろでひとつに縛ってはいるが、肩にかかる程度の長さ
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍。愛子の秘密を知った
 長曾我部元親♂…28歳。8年前に元服し、家督を継いで国主に。
            孫市の昔馴染みであり、政宗とも交友関係にある        
 



 食卓に並んだおかずの数々は、質素でありながらも、まさに国主の膳たる品のよさがあり、また食通である政宗の手が加わったことで、彩りも歓待の卓のように華やかだった。
 煮物ひとつにしても、食材にからめられただし汁のてり艶と、たちのぼる湯気の食欲をそそる香りに、口内がじわりと反応する。野菜の扱い方も、おそらくは剣同様、片倉仕込みなのだろう。食材の持つ鮮やかな色を引き立たせつつも、しっかりと味がしみ込んでいることが分かるこの色、丁寧な盛り付け。その全てが職人に勝るとも劣らない出来栄えだ。
 一方、幸村が捌くつもりだった魚は、すでに内臓の類も取り出されて、ある程度は開いた状態になっていた。だがそれにしても、忍の訓練で鍛えられたからなのか、それとも彼の性格なのか、生ごみ入れの中にあった捌き後の物は、猫が跨ぐほど無駄がない。
 煮込んだ食材を使い分けしたという、元就が作った汁物も、非常に彼らしい控えめな味付けだったが、まるで香をたしなむように香りを味わわせる雅さだった。それなのに。
「独眼竜、その歳で斯様な濃さを好んでおっては早死にするぞ。辛すぎるわ」
「野菜の魂だけみてぇなアンタ味付けじゃ、雪国の冬は乗り切れねぇんだよ。な、真田」
「そ……某は食べ物であれば、何でも腹に入れられ申す故……その……」
「若虎、今度己以外の者へ何かをふるまう時は、少しは考えて賄(まかな)え。幼少の折りは我とて、とても贅沢はできなんだが、それでも貴様の言う『食べ物』の大半は、我の許容範囲を越えている。独眼竜なんぞは食あたりを起こすぞ」
「しょ……食あたり!? も、申し訳ござらん、政宗殿! 某、悪意あってのことでは……」
「……真田……俺の風呂の間に、いったい何入れたんだ?」
 彼らの生きた群雄割拠の世は、文化の国境越えが難しかったが故に、いわゆる「小さな国風文化」が栄えた時代でもある。互いの味付けに違和感を覚えるのは至極当然のことだ。
 しかし、そんな彼らが味以上に、揃って驚愕を覚えたのが、愛子の手にした茶碗だった。
「愛子……」
「……? どうしたの?」
 茶碗、と言うにはいささか巨大な、もはや丼というべき器に山盛りの白米。それを手にして、いただきます、と手を合わせた愛子に、武将達は思わず絶句した。
「なぁ……アンタ、普段はその量を食ってるのか?」
「はい。そんな、驚くほど多いですか?」
「……多いだろ……」
「お……お屋形様……」
 思わず突っ込む政宗。幸村に至っては、何を思ってそうこぼしたのか、もはや謎である。
「でも、男の人ならこのくらいは軽く食べちゃいませんか? 真田さんもあれだけ槍のお稽古をされてたので、てっきり同じくらい召し上がってると思ってたんですけど」
「食べろと言われれば食べられるが、満腹は咄嗟の動きを鈍らせ申す。それに……」
 幸村は今でも密かに忍の鍛錬を続けているのだが、そのうちのひとつに、断食、がある。
 忍というものは侍以上に、過酷な状況下での任務が多い。丸三日食さずそのまま戦闘などということもざらで、佐助のような上忍ならば、任務中でも二十日程度なら水だけで軽く耐える。逆に日ごろから三食きちんと食べているようでは、非常時の弱りが早くなる。
 しかし、幸村が忍であったことは極秘事項。それ以上は語れず、言いよどんでいると、
「真田の言う通りだ。それに、米ってのは大事な兵糧だ。百姓連中が手前ぇの食う分節約してるってのに、そいつらを戦に巻き込んでる俺達が、食い尽くすわけにはいかねぇ」
 政宗がさりげなく彼の言葉を受け継ぐ。幸村は、戸隠の里でさんざん咎められた、隠密の足を引っ張る隠し事の向かなさに自己嫌悪しつつ、政宗の機転のよさに改めて感服した。
「そうですね……こちらでは戦もありませんし、ごはんはお金さえあれば、災害でもないかぎり、手に入らなくなることはまずないので、皆さんからみればかなり暴食かも……」
「そなたは幼いころから何でもよく食すおなごであった。そこへきて自由に動き回れる世で育ったうえ、手に職を持ち、食も行き届いた生活にあれば、背丈も高うなるわけよな」
 双子の姉・舞子は、戦国の世では標準的な、小柄な女だ。ふたりは顔立ちこそよく似てはいるものの、背丈に関しては愛子のほうが姉に見えるほどすらりとしている。ただし、したたかな舞子のこと。意図的に男好みの体作りをしていた、という可能性も否めないが。
「食い扶持(ぶち)に困る心配がないというのは有難いが、槍を使う場がないとなれば、気をつけねば太りそうでござるな」
「Ha! お前は特に甘味好きだからな。俺も刀が手元にねぇ以上は、他人事じゃねぇが」
 そのふたりのやり取りをじっと見つめ、しばし物思いに耽った愛子。そんな彼女を、元就がちらりと見やりながら、やはり辛いわ、と口に入れた里芋に顔を顰めた。

 挑発的な佐助の笑みに片眉を歪めた慶次を、佐助は迎え撃つように正面から見据えた。
「愛子と恋仲でも夫婦(めおと)でもないあんたが、俺様に文句を言う筋合いはないよね」
「あぁ分かってるよ。口付けを許してもらえた途端、暴走したせいでダメにしたのは俺だ」
 慶次は半ばやけくそのように、自ら過去を口にする。傍で聞いていた元親は、慶次と愛子の関係が初耳だったこともあり、流石に反応に困ってため息をついた。
「悪いけど、それも知ってる。夜桜の中で逢引して、そのあと抱こうとしたんだって?」
「……何でそんなことわざわざ聞き出すんだよ」
 怒りで声を這わせる慶次に、佐助はフッと鼻で笑って、決まってるでしょ、と続ける。
「あいつの過去の男を把握するためさ。連絡手段を遮断して、ちゃんと忘れさせないとね」
 強引に口説いたとも受け取れるこの言い様に、慶次は暫し佐助を眺める。
「だったら……この先何があっても、忍だからっていう言い訳はすんなよ」
 いよいよぶち切れるか、と思いきや意外にも慶次は、まるで諭すように低く語り返した。
「……何それ。どういう意味?」
「そりゃ忍だったら秘密も聞き出すだろうし、戦国時代に生きてたら人の命を奪うことだって避けられない。けどさ、忍だから相手を不幸にしていい、なんて理論は通用しない」
「それさ、忍に限った話じゃないんじゃないの? ていうか本当に何? 藪から棒だな」
「あんたが何で俺を牽制してるのかは知らないけど、俺にとって愛ちゃんは初恋の女の子である以上に、ずっと一緒に育ってきた家族のような存在なんだよ。だから愛ちゃんには、例え俺がその相手じゃなくても、幸せになってもらいたいって思ってる。誰かに裏切られたり、利用されてあっさり捨てられたり、そんな思いは絶対にしてほしくない」
「やれやれ、俺様ってやっぱり信用ないね。まぁ女を利用するのは男の忍の王道だけど」
「だから……俺はあんたを信じることにする」
 唐突に向けられた己への信頼の意に、佐助は面食らって咄嗟に言葉に詰まった。
「……え? えっ……とさ……何? ていうか『だから』の使い方おかしくない?」
「あんたはさっき、愛ちゃんに過去の男を忘れさせるためとか何とか言ってたけど、愛ちゃんは人に唆されて恋をするような子じゃないよ。電話で少し話した感じでも、いつもの愛ちゃんと何も変わってなかった。愛ちゃんは、素直で明るい愛ちゃんのままだった」
「それが俺様を信じることにどうして繋がる」
「愛ちゃんは、あんたを命の恩人だと言ったんだ。元親にも世話になったとは言ってたけど、あんたは愛ちゃんを、遭遇した敵から命がけで守ったって聞いてる。それで愛ちゃんがあんたを好きになったんなら、あんたが本気で愛ちゃんを守ってた、ってことだろ」
 今度は慶次が、佐助にわざと意地悪く笑ってみせた。その様子に、元親が苦笑する。
「流石だな、慶次。こいつぁ甲州から小田原まで愛子を背負って、山を走って越えた男だ」
 まるで己の忍を誇るような元親の話に、佐助は苦い表情を浮かべ、慶次は目を見張った。
 馬はおろか、車でも苦労するあの山を、人を背負って走って越える。しかも背に担いだ愛子の命を守りながらだともなれば、慶次の想像力では佐助の苦労は到底現実に及ばない。
「鬼の旦那、余計なこと言わなくていいから」
「何だよ、本当のことを言っただけじゃねぇか」
 確かに事実を言われたに過ぎないが、佐助としては、今の時点での陰徳話は都合が悪い。
「ずいぶんと楽観的な結論に達したみたいだけど、俺様を信じるのは早いんじゃないの?」
「そりゃ愛ちゃんが本気であんたに恋をしているのかは、会ってみないと分からない。けど、それ以外の愛ちゃんに関する嘘は、俺には通用しないから。覚えといて、忍の旦那」
 そう言って慶次は佐助の肩を、バッシンと音が鳴るほど思い切り叩く。露骨に嫌な顔する佐助に、こんなの痛がってたら愛ちゃんの尻に敷かれるよ! と盛大に笑い、
「とにかく、これからも愛ちゃんをよろしく頼む!」
 と、慶次は勢いよく頭を下げた。嘘、と関係をあっさりと断定されたことで、慶次と愛子の絆に、己の技では忍び込めぬほどの強さを思い知らされ、佐助は僅かに眉を寄せる。
 そして、己が意地の悪い態度をとる本当に理由に、薄々察しがついてきたらしい元親の視線を受けると、ちょっとこの人どうにかしてよ、と彼を見返した。しかし返ってきたのは、ツケは手前ぇで払いな、という元親の、これもまた意地の悪い笑みだった。

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※↑で文字化けする方(携帯からお読みになる方など)は、カテゴリーから<「うたかたごころ」第4章>→「第4章⑫」へお進み下さい。


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