大和ごころ
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第5章-幸村編-⑱ [「うたかたごころ」第5章-幸村編-]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第5章-幸村編-⑱の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
                     かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 真田幸村♂…23歳。戦国一の兵(つわもの)と称された武将。
 (真田源次郎)現代では、島津の店で雑用をして働いている。
 伊達政宗♂…25歳。島津の店では主に厨房を手伝っている。
          眼帯はドラッグストアで買った物に替えている
 前田慶次♂…26歳。愛子の幼馴染。愛子と交際していたが破局。
         フリーター。今は島津の喫茶店で働いている
         ※髪型は後ろでひとつに縛っているが、肩にかかる程度の長さ
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍。
 (長野佐助) 島津の店で厨房を手伝いながら、ホールもこなす 
 戸隠(とがくし)かすが♀…25歳。Japan Air の地上係員で、愛子の同期
 片倉小十郎…Japan Airの名操縦士。愛子とは一緒に乗務することがある




 真田幸村の歴史を変える。それは即(すなわ)ち、日本の歴史を変えることだった。
 確かに、歴史の分岐点はひとつではない。四百年もさかのぼる時代に生きた伊達政宗でさえ、そのことは認識している。関ケ原の合戦後も、幕末、大日本帝国の時代と、幾度も激動の時を経てきた日本史。それを知る現代人の慶次は、例え一か所、歴史がすり替えられたとしても、のちの転換点で歴史が修正される可能性は、大きいのではと思っている。
 だが、真田幸村の人生や生き方、魂の変化は、単純な彼の寿命問題には収まりきらない。
 彼の生き方が変わるということは、彼の死後、幸村の武者魂に突き動かされ、日本の歴史に関わってきた武士(もののふ)の全てに、影響を及ぼすということだ。つまり、日本の歴史に点在する数々の分岐点に、大きな変化をもたらす可能性があることを意味する。
「佐助さん……主君を、真田さんを大事に思う気持ちは、理解できるよ。俺の言葉だと薄っぺらく感じるかもしれないけど、俺は今まで歴史を勉強するとき、この人がもう少し長生きしてたら、歴史はどう変わったんだろうって、感じたことは何度もあるしね……」
 でもさ、と続ける慶次。だが、佐助は慶次に一瞥もくれず、怒りを滲ませる政宗の左目を静かに凝視したまま動かなかった。感情のない佐助の瞳ほど、気味の悪いものはない。
「でもさ、でも……真田さんが……」
 大阪の役で生き延びて、と言いかけて、慶次は口をつぐむ。佐助は恐らく、ネットで真田幸村の最期を検索済みだろう。だが、政宗はどうか。政宗は未来を知ることを嫌う。好敵手である幸村の最期を、政宗の前で軽々しく口にしてもいいものか。しかし、政宗は、
「前田、いいから最後まで話せ。アイツの最期は恐らく討ち死にだ。具体的に調べたわけじゃねぇが、そのぐらいのことは察しがついてるし、そもそもそれは俺の望みでもある」
 言いよどむ慶次に不敵な笑みを浮かべた。しかし、こちらも佐助から目を逸らさない。
「俺が目指すは天下、そして戦国一の兵(つわもの)を討つことだ」
 これが武士、否、戦士というものか。慶次は政宗の気迫に、続けたかった言葉を失った。
 あれだけ互いを認め合い、信頼し合っているのに。彼らが望むことは未だに、殺し合いの決着をつけることだったなんて。慶次には彼らが、戦のない現代で、それこそ現代的な友情を育んだように見えていた。だが、まさか腹の底では、敵同士という認識でいたとは。
「独眼竜、真田さんはあんたの友達だろ? 討つだなんて言うなよ。佐助さんだって……」
「安心しな、風来坊の旦那。俺様だって、主君がみっともない死にかたするのは御免だぜ」
 佐助の忍らしい低い声音に、慶次は嘆息する。主の戦死を望むなど。慶次にとっては、政宗が幸村の討ち死にを望むよりも、さらに理解しがたい心情だ。だが同時に、ひとつの疑問も沸いた。真田幸村の討ち死にを望む、ということは、それはやはり今現在の日本史と同じく、彼に大阪夏の陣で戦死させるつもりなのだろうか。政宗も眉をしかめている。
「分からねぇな。討ち死にってのは、生き恥を嫌う武者の末路だ。仮に今後、真田が生きることに執着するようになれば、アイツの最期は恐らく、‘ご立派’からは遠ざかるぜ」
「ゴメン、俺も、ひとつ分からないんだけど……そもそもみんな、戦国に帰らなかったらどうすんの? このまま長生きして、こっちで寿命を迎えたら、真田さんどころか、伊達さんも毛利さんも……みんな歴史が変わっちゃうじゃない。討ち死に以前の問題だよ」
 それとも、仮に彼らが現代で命尽きた場合、亡骸は戦国に帰るのだろうか。そんなことをぽろりとこぼしながら、慶次は首を傾げた。よくよく考えてみれば、問題は山積みだ。
「そのへんは俺様にも分からないね。けど、もしこっちの世で俺たちが死ぬんなら、記されてる日本史が、とっくに書き換えられてると思うぜ。けど、少なくとも俺様がこっちで把握した歴史は、今現在動いた形跡がない。それ以前の変化のことは知らないけど」
「あぁ、それなら安心して。教科書やネット情報のレベルでは変わってないよ。今も、子供のころに俺たちが学校で習った状態のままだ。まぁ実際に本人達から当時の話とか聞くと、教科書に書いてあることとずいぶん違ってたんだなって、今では感じてるけどね」
「Ha! そんなもん、テレビに出てる連中だってそうだろ。本人が生きてたって改ざん情報が飛び交ってんだ。四百年も前のことなんざ、正しく伝わってるとは思っちゃいねぇよ」
「そう……つまりそういうことさ、風来坊の旦那」
 徐(おもむろ)に立ち上がった佐助。冷蔵庫に手を伸ばしかけては話に気を取られ、一向に酒を出さない慶次にしびれをきらしたか、佐助は政宗を素通りして冷蔵庫を開けた。
 そんな佐助を見送るように振り返る政宗は、佐助の言葉にようやく合点がいき、
「そういうことか」
 とひと言吐き捨てる。意味が分からない慶次は、え、何、とふたりを見比べるしかない。
「で? 猿飛。今度は俺に何をやらせようってんだ」
「あらら、よしてよ、旦那。奥州筆頭をこき使うなんざ、俺様ごときには畏れ多いぜ」
 「俺」に「様」まで付けておいて、どの口がそれを言ってんだ、と政宗は苦笑した。

 片倉阿梅(うめ)。歴史では片倉小十郎の継室で、真田幸村の娘ということになっている。
「まぁ……歴史というものは、後の人間が書き換えている場合が十二分にありますからね」
 と、パイロットである現代の片倉小十郎は、かすがの叩くノートパソコンを覗き込む。
 かすがの先祖に、真田氏と縁があったという話は聞いたことがない。この記述では確かに、先祖の「梅」もとい「かすが」と、片倉小十郎に嫁いだ「梅」という女性は、全く別人のように思える。だが小十郎曰く、この時代の女性で名前が残っており、尚且つ、信州から東北に嫁いだというところまで同じとなると、同一人物の可能性は充分にあるという。
「でも、私の先祖のかすがが仕えていたという軍神って多分、上杉謙信のことだと思うんですけど……そうすると伊達軍師の片倉小十郎の継室とは、年齢的には親子どころか、孫くらいの開きがあるかと……梅、という名前も、この時代は珍しくないと思いますし」
 かすがはやはり、自分の先祖が片倉家に嫁いだ可能性は、低いのではないかと思わざるを得なかった。しかし、諦めきれない様子の小十郎は、失礼してもいいか、とかすがに断りを入れて、自らキーボードに手を伸ばし、キーワードを変えて引き続き検索を始めた。
「そういえば……今日会った真田くん」
 ふと手を止めた小十郎が、ノートパソコンの画面から、わずかに視線を動かした。
「真田源次郎くん……あなたと同じく信州のご出身でしたよね。姓も真田ということは、大阪夏の陣の前に、真田幸村が伊達家に預けた真田氏の子孫の方とは違うんでしょうか」
「え……さ、さぁ……」
 まさか、真田幸村本人です、とは言えない。さして興味のない風を装い、彼から話題を逸らすために、他に何か見つかりませんか、とかすがは検索結果の表示された画面を覗き込んだ。しかし当の小十郎は、彼の連絡先を聞いておくんだった、と残念がる始末だ。
「かすがさん、今ならまだ彼は起きてますよね。連絡とっていただくことはできませんか」
「え……でも……彼、歴史にそんなに詳しくはなかったと思いますし……」
「そんなことはありませんでしたよ。むしろ戦国武将について相当の知識をお持ちだった」
「…………」
 あいつはいったい何を喋ったんだ。そうでなくても真田源次郎を名乗っているのだ。同じ時代の武将の話を掘り下げれば、何故そんなに詳しいのかと疑問を持たれて当たり前だ。
「で……でも、戦国ゲームからの知識だったと思うので、女性の歴史はほとんど知らないと思います。その証拠に江戸時代以降の話題には、丸っきり付いて来れないですし……」
 申し訳ないと思いつつ、戦国随一の智将と称される彼に、アホのレッテルを貼り付ける。
「そうですか……残念です……せっかく真田姓をお持ちなのに……」
 小十郎のトーンダウンにほっとひと安心するも、かすがは自分の先祖について、何故彼がこれほど熱心に調べてくれようとしているか、疑問が湧いた。この話を掘り下げれば、折角諦めた彼の情熱がまた再燃しそうだが、結局かすがは、自分の好奇心に負けた。
「片倉さん……この梅という女性に、何か特別な思い入れがおありなんですか?」
「えぇ……その……」
 言いよどむ小十郎に、かすがは何故か胸中に妙なもやを感じた。梅は四百年も前に生きた女性。それなのに、女性に執心し、何かを隠す小十郎の態度に、妬いてしまうなんて。
「……あ……あの、無理にお話しにならなくても……失礼しました……」
 心とは裏腹に引いてしまう自分の不器用さが悲しい。でも、小十郎に疎まれたくない。
「いぇ……いいんです。お話しします。あなたのご先祖に関わることかもしれませんので」
 小十郎の顔が、少しだけ紅潮したように見えるのは気のせいだろうか。これを見てください、とパソコンの画面に促され、かすがはさり気なく、彼の耳裏の辺りにあった視線をそちらへ移す。映っているのは「片倉小十郎」の略歴と、系譜が記されたページだった。
「片倉小十郎とは代々の名なんですが……梅を娶った男、実は初代小十郎の息子と言われているんです。ですが、先ほどのかすがさんの話のように、私の家にも先祖の秘話のようなものが伝わってまして……梅という女性、本当は初代の側室だったそうなんです」
 そこで言葉を切った小十郎、今度はかすがにもはっきりと分かるほど、顔を赤らめる。
「大恋愛の末、密かに子をもうけたとかで、実はその子供が、私の直接の先祖だそうです」

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