大和ごころ
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第5章-幸村編-⑤ [「うたかたごころ」第5章-幸村編-]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第5章-幸村編-④の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
                    かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 戸隠(とがくし)かすが♀…25歳。Japan Air の地上係員で、愛子の同期
 伊達政宗♂…25歳。島津の店では主に厨房を手伝っている。
         眼帯はドラッグストアで買った物に替えている
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍。
 (長野佐助) 島津の店で厨房を手伝いながら、ホールもこなす
 長曾我部元親♂…28歳。幼少の愛子と元就を知る。
             現在では、島津の店の厨房を手伝っている
 石田三成♂…上田に滞在中現在に飛ばされた。今は愛子と同居中
 小早川秀秋…23歳。島津の店の調理師。現代では細身。
         食材へのこだわりが強く、若いが腕利きの料理人




「それで、私に話、とは?」
 バーガーショップで4人席を確保したかすがは、向かいに腰を下ろした伊達政宗に視線を移した。携帯はテーブルの上に置く。愛子達からの連絡にすぐ気付くためでもあるが、先刻、話がある、と切り出した政宗の鋭い視線に、「2人席に案内された」と嘘まで吐かされたことを考えると、自分も不審と受け取られる行動を、極力避けたほうがいいと思った。
「この前、空港で会った……片倉……アイツの素性が知りたい。調べてくれねぇか」
 予想外の名前と、やけに犯罪めいた物言いに、かすがは思わず、素性? と尋ね返す。
「そうだ。出身地や学歴の類はすぐに分かるだろうが、アイツの家族が何処で何をしてるのか、操縦士になった詳しい経緯……それと……何か、家宝を受け継いでいるかも、だ」
「家宝?」
「何でもいい。手紙でも、刀でも。アイツが戦国から持ってきてる物なら、何でもな」
 戦国武将である政宗が、知るはずのないパイロット・片倉のことを、アイツと呼ばわる理由は、かすがも承知している。初めて片倉の姿を見かけた時、アイツは俺の右目だ、と睨む彼の尋常ではない様子からも、どれだけの腹心だったのかは一目瞭然だった。だが、
「持ってきてるって……待って下さい。あなたが戦国時代で、腹心と数か月前から別れたきりになっているのは、佐助から聞いています。ですが、まさかと思いますけど、あなたは片倉機長が、先にこちらに飛ばされてきた自分の腹心だと、疑っているんですか?」
 それはあり得ない、とかすがは頭(かぶり)を振る。だが政宗は、Ha! と鼻で笑った。
「そんなことはアイツをひと目見りゃ分かる。いくら刀を握れねぇ環境になったって、たかだが数ヶ月で、侍の体躯があそこまで削げるもんじゃねぇ。疑ってるのは別のことだ」
 削げる、という言葉に、かすがはわずかに不快を露わにした。武士(もののふ)を蔑(さげす)むつもりはないが、パイロットが武士よりも生易しいものだと思われるのは心外だ。
「では、何故片倉機長の身元を? 言っておきますが、操縦士である、というだけで、社会的信用は保証されているようなものです。それに、他人のプライバシーをあれこれ調べるのは、こちらでは犯罪になります。私がもし、捕まるようなことがあれば、私と繋がるあなたの存在も、恐らくは明るみに出る。その危険を冒してでも、やる必要が?」
 国家間を行き来するパイロットやCAの身辺は、会社によって守られている。ということは即(すなわ)ち、常に監視されているということでもある。国際犯罪に巻き込まれる危険と隣合わせである彼らは、逆に言えば、犯罪組織と繋がることも容易いからだ。
 それに、もうひとつ問題がある。かすがはJapan Airの地上係員を専門に管理している、関連会社の社員であり、厳密に言えば、乗務員とは違う会社に所属している。つまり、かすがにとって小十郎は、上司ではなく他社の社員だ。そんな彼の身辺を捜査するなど、仮にプロの探偵に依頼したにしても、バレれば間違いなく、かすがは解雇処分される。だが、
「あぁ。委細承知のうえだ」
 どれほど危険な依頼であるか、その一切を納得していても尚、頼む、と政宗は告げた。
 そして、佐助以外の武将と、できれば愛子には、関わらせずに成し遂げてほしい、とも。
「佐助以外……ということは、私がこの件に関わること、佐助は既に知っているんですか」
「ご名答」
 政宗の答えに、ある結論に至ったかすがは、思わず息を飲んだ。
 猿飛佐助という男。おちゃらけているように見えても戦国随一の上忍、即ち、凄腕の殺し屋である。しかも彼は、さすが忍というべきか、驚くべきほどの順応能力を備えていた。
 こちらでの生活はまだ、たったのひと月足らず。にも関わらず彼は既に、現代社会の仕組みを理解してしまっている。ネットや新聞を読み漁り、テレビの内容を理解するにとどまらず、パソコンにおいてはもはや、持ち主の島津以上に使いこなしている。この勢いなら恐らく、そう遠くはないうちに、完全犯罪を講じるに足るレベルに達するのは明らかだ。
「つまり、他言するな、と……私が不審な動きをすれば……あの男が動く、ということか」
 殺し屋の彼が、動く。まさかそんな、と口にしたかすが自身も、どこか非現実的に感じていた。このご時世、いくら戦国の上忍と言えども、そう簡単に人殺しを完遂するなどと。
 だが目の前の政宗は、かすがの言葉を特に否定するでもなく、それどころか、そんなことまで俺に言わせるな、とでも言わんばかりの、悲しげ、とも受け取れる瞳を向けてきた。
 かすがの背に、ぞっとするほどの冷気が吹き上げていく。
 言うことを聞け、と脅されたほうが、まだ突っぱね返せたかもしれない。
 だが、政宗の纏う気迫は、これまで幾度となく非道な選択をしてきた国主のそれだった。彼が一度決めたことは、必ず成されてきたのだろうこと、そして、佐助が一度仕事を請け負えば、必ず実行されるであろうことを、かすがに分からせるには充分な、竜の気迫だ。
 ── 殺される。
 殺人事件と言えども、犯人が戦国時代に戻ってしまえば、警察の追跡は不可能だ。
 いや下手をすれば、戦国武将に殺されることで、かすがの存在自体が最初からなかったことになりかねない。何しろ、現代ではたった1日しかなかった空白の間に、愛子は半年もの時を戦国時代で過ごしたのだ。もはや天がどんないたずらをしても、不思議ではない。
 ── 本当に……私は殺されるかもしれない……彼らに……もしくは天にか。
 喉が渇きを訴えても、コップを握るかすがの手は、テーブルに吸い付いてしまっていた。

 幸村達が、花見から帰った1週間後のことである。翌日から海外への乗務をこなしていた愛子は、久しぶりに閉店間際の店に顔を出し、遅番の三成を連れて帰ると言って、カウンター席に腰かけた。まるでペットを迎えにでも来たような言いように、当然狂王は、貴様、私を愚弄する気か、と喚き散らす。だが、当の愛子は、何かいい事でもあったのか、くふふ、と気味の悪い照れ笑いを浮かべただけで、全くもって三成の怒号が届いていない。
「ねぇねぇ、佐助さん」
 生まれてこのかた、ねぇねぇ、などと呼ばれたことがあっただろうか、と思いつつ、
「何かな? 愛子ちゃん」
 と、子供番組のお兄さんよろしく、佐助が振り返る。だが、コップを拭く手は止めない。
「もし佐助さんが、自分の未来に君がいてほしい、って男の人に言われたら、どうします?」
 そのことか、とすぐに思い至った佐助。がっくりと肩を落として、あのさぁ、と答える。
「俺様がもし‘男’にそう言われたら、迷わずそいつには独眼竜を紹介するね」
 揚げ足を取られて、ぷくっと頬を膨らませた愛子は、なら質問を変えます、と続けるなりまた一瞬にして、にひゃらと頬を緩める。その質問とやらが、この顔で既に丸分かりだ。
「さっきの台詞を、佐助さんが女性に伝えるとして、それってどういう意味で言います?」
 これまでの経験上、女がこの手の問いをする場合、それは質問でも相談でもなく、確認であろうことは佐助も心得ている。いつの時代も、こういう話に巻き込まれた男は、女の辿り着いた結論を裏付ける言葉以外、余計なことを言わないのが利口というものなのだが。
「あぁ、そうだな……俺様の嫁になってよ! そんで早速子供作ろうぜ! って感じ?」
「…………」
 凄まじく露骨な佐助の答えに、愛子の瞳が逆三角形になった。が、迫力は皆無である。
「何だ何だ? 折角の春の宵に、情緒のねぇ口説き文句が聞こえたのは、気のせいか?」
 明日の仕込みを終え、厨房から引き上げてきた元親が、秀秋と共にホールに姿を現した。
 ちょうどよかった、とぱっと瞳を輝かせた愛子は、ねぇねぇ弥三郎兄さま、と捕まえる。
「男性が、自分の未来に君がいてほしい、って女性に言う場合、どういう意味になります?」
「あ? そりゃ……」
 情緒というものを引っぺがし、意味を説明するとなると、確かに先ほどの佐助の言葉になる。でしょ? と佐助が元親に同意を求めると、そりゃそうだけどよ、と彼は苦笑した。
「普段は言葉をひねりまくって人を煙に巻いちまうくせに、こういう時だけ超直球かよ」
「しょうがないでしょ。だって俺様、戦国随一のひねくれ者なんだから」
「そうは言ってもよ、仮にもあんたの主の言葉なんじゃねぇのかい」
 あら、ご存知で、と言いつつ、さして驚いた風もなく、拭きあげたコップをしまう佐助に、やっぱりそうかい、と元親は笑った。やっぱりって? と佐助は目で尋ね返す。
「いや、四国にいるときによ、俺もあんたの恋敵になっちまうかもしれねぇぜ、って葉っぱかけてやったら、あの野郎、こう返してきやがったんだ」
 ── 鬼の将、いや、戦国一の大海賊殿を相手に守るのであれば、望むところにござる。
「愛子を守ると誓った手前ぇの魂、一点の曇りも無し……あれには俺も参ったぜ」
 己の首に刃をあてがい、辞世の句に替えて幸村がそう吼えた話は、既に佐助の耳にも入っている。が、あの時の幸村を天晴れと賞する元親の言葉に、胸の痛みが蘇ったのか、愛子が悲痛な面持ちを見せた。それを見逃さなかった佐助は、コップを全てしまい終えると、
「なぁ……そろそろちゃんと確認しておきたいんだけどさ」
 甲斐での尋問の時と同じ目を愛子に向けた。真剣に答えろ、という気迫を備えた瞳だ。
「あんた、毛利の旦那とうちの大将、自分が嫁さんになりたいのはいったいどっちなの?」

「第5章-幸村編-⑥」へ

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