大和ごころ
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第1章② [「うたかたごころ」第1章]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第1章②の登場人物>
 島津義弘♂…40歳手前の特別救助(レスキュー)隊員。
         九州の消防でレスキュー隊長を務めていたが、引退した
 立花宗茂♂…30前後。広島のとある地域の消防に所属する特別救助隊員。
         島津に憧れて、レスキューの道に進んだ

 吉川愛子(きっかわ あいこ)♀…(回想)5歳。主人公
 


 1999年12月26日。
 震災によって壊滅した場所から愛子が助け出されて、今日で丁度十年の歳月が経った。
 愛子が発見されたのは1989年。この年は、鳥取県西部でマグニチュード6クラスの地震が群発し、中国地方の広い地域でその被害が確認されていた。しかも、6月から8月にかけて、日本列島に次々と上陸した強い勢力の台風により、不安定な天気が続いた。それにより、緩くなっていた地盤が、さらにその被害を大きくしていた。
 あの日、愛子が助け出された地域も、その例に漏れず、多くの被災者を出した。1981年以前に建てられた家屋の多くは、今日ほど耐震性に優れてはおらず、その為一部倒壊、または半壊した家屋もあり、多くの住民が避難を余儀なくされていた。
 特に起伏の多い場所では、地震でおきた地滑りや道路の陥没により、孤立した地域もあり、各地で消防救助隊が派遣され、ヘリによる救助活動も行われていた。
 愛子が折り重なる木の残骸から救出されたのは、そんな中での出来事だった。

 かつてレスキュー隊として災害救助を行っていた島津義弘は、たまたま休暇で訪れていた広島で、この地震に遭遇した。
 そして、島津と同じ九州出身で、島津に憧れて消防救助隊になったという立花宗重が、偶然この地区の公務員として勤務していたため、協力することになった。
 いや、偶然というには語弊があるかもしれない。
 島津がこの地にいたのは、彼を師と仰ぐ立花が、彼の現役引退の連絡を聞きつけて、会いたいと申し出た為だったからだ。
 島津は40を目前にして、年齢的な限界もあり、レスキューの隊長職を辞職した。救助隊員の寿命は短い。大抵は35歳前後で除隊する。そんな中、40に手が届くこの歳まで現役で救助に携われたのは、長年の経験に培われた豊富な知識と、その人柄が買われてのことだった。
 そして、その長年の勘が、その夜島津に不穏な空気を察知させた。
「月が赤い。空が明るい。水の生き物が一列に並んでおる。こういう時は、何かが起こるんよ、宗茂どん」
 そう言って、酒を余り飲まなかった島津に習い、立花も酒を控え、念の為妻にも気をつけるように連絡をとった。
 そして、その島津の言葉は見事的中し、立花は緊急招集された。

 速報ではこの辺りは震度5と出たが、地盤がゆるくなっていたからか、揺れは相当強く感じた。お陰で自分達のいた建物は、倒壊こそ免れたが、大きく歪み窓ガラスが割れた。
 立花が署に向かった後、島津は地域の住人と一緒に避難場所へ向かった。が、如何せん若者が帰省してくる時期にはまだ一日二日早かったせいで、住人は年寄りと女子供ばかり。満足に動ける男手が少ない。結局、消防が到着する間は島津が指揮だって救助を行った。
「こいで全員かの」
 自治体職員が点呼をとり、この周辺の全ての世帯が避難所に来ていることが確認できた。
 しかし、島津にはひとつ気になるものがあった。
 避難場所に来る途中に見えた、少し小高い丘の上にあった木造平屋の一軒家。
 随分と古い家屋だったようで、粗末な屋根瓦が木材に折り重なるように散らばり、建物そのものは既に全壊していた。
 念の為、一緒に避難していた若い親子に、あの家は何だと尋ねたが、丘の上には誰も暮らしていないはずだと言われた。確かに電線が通っていなかったので、おそらくどこかの家の物置として使われていたのだろう、とその時は取り敢えず納得した。
 しかし、もう一度振り返った時、島津はある物が目に入った。
 ── 布団じゃ。
 離れの物置に布団をしまう家などない。しかも、瓦礫の間から覗いていたそれは、畳まれた状態ではなく、建物の中に敷かれてあったものが、外に滑り出ているようだった。だとすると、どう考えても、誰かがそこで寝泊りをしていたとしか思えない。
「立花どん、ひとつ気になることがあるんじゃっどん」
 外部に続く唯一の道路が地割れを起こしたと連絡を受け、救助工作車で避難所にやって来た立花に、島津は丘の上の家屋のことを説明する。
「島津さん、あの丘一帯は大昔に土砂災害を起こして、麓の村を飲み込んだことがあるんです。それから、度々崩れたり何だりで危険な箇所でして。一応補強はされていますが」
「じゃったら、なおのこと誰もおらんか確かめんといけんよ。おいが案内するから」
 島津は、救助に同行するため、万一に備えて予備の救助服を着用し、例の場所まで彼らを案内した。休暇中、しかも自分の所属地域とは違う場所での救助活動だ。何かあったら立花の職責を問われる危険行為だが、人命がそこにあった場合、ことは急を要する。島津らは、丘に迫る山肌を警戒しながら、例の謎の家屋に向かった。

 到着した島津は、まず散乱している瓦礫の古さに驚いた。
「こいは……、地震なんてなくても、いつ壊れてもおかしゅん建物じゃったはずじゃ」
「それにしても、こんな建物はここには無かったはずなんですが……」
 確かに、避難所に来ていた住人の誰に聞いても、あの丘には建物はない、古い墓のような物があるだけで、ましてや人なんて住んでいないはずだ、と言われた。
 だが、ひとりの老人が、あの丘に関して妙な噂を聞いたことがある、と申し出てきた。
「大昔、あの丘に住んでいた女の子が、崩れた土砂の下敷きになって死んだそうで、あの墓はその時死んだその子供のだと聞いたことがあるんじゃ」
 その老人の言葉を受けて、今度は高校生の少年がこう付け足す。
「そう言えば……、俺も小さい頃、二十六夜の日、あそこで女の子が助けを呼ぶ声が聞こえるって噂を聞いて、肝試ししたことがあった」
 あるはずのない建物が、確かにそこにあったと言う島津の言葉に、一同は気味悪がって、そんな場所へ戻るなんてよしたほうがいいと、声を揃えた。
 確かに、実際来てみると、妙な噂の流れそうな不気味さがあった。
 丘の先端にある古い墓は、墓石が劣化して墓標が読めない。
 折りしも今宵の月例は27.2。新月に限りなく近いはずの深夜の空は、今日に限って妙に明るく、その空には二十六夜よりも鋭い月が赤く佇んでいる。
「島津さん、布団がありました」
 瓦礫の間から布団を見つけた立花が、急いでそれを引っ張り出す。
「さっきおいが見た布団じゃ。血や髪の毛の付着がんか、調べてくれんごっか。おいはもうちっと奥を調べてみる」
 そう言って、木片の間を慎重に進む。こんな時に救助犬がいればと、島津は今更思った。
 その時。
「立花どん、何か聞こえんか」
 島津の言葉に、立花も作業を中断して耳を済ませた。
「子供の泣き声じゃ」
「え!?」
 立花はぎょっとした。先ほどの妙な噂を信じているわけではないが、さっきの今でこのシチュエーション。流石の立花も悪寒が走る。
 島津は、そんな立花に、ちっと手伝ってくれんごっか、と叫びながら、ある箇所の瓦礫を夢中で取り除き始めた。立花も我に返り、急いでマット型空気ジャッキの準備をする。
 先ほど声が聞こえた辺りの木片をどかすと、瓦礫の中からまた布団が現れた。既に無数の木屑が刺さっていたそれは、こんもりとしている。島津はそれをそっとめくってみる。
 中にいたのは、園児くらいの少女だった。助けを呼びすぎて、もはや声も出ないようだ。
「やっぱいいたわぃ! 小さな女の子じゃ! 今助けるから、しっかりせんといけんど!」
 少女は、随分と質素な浴衣のような肌着を纏っており、しかもぐったりとしている。が、一瞬だけ薄目を開けてこちらを見ると、ヘルメットに装着していたライトが眩しかったのか、僅かに顔を顰めて背けてしまった。自分が分かるかと、意識の確認をすると、少女は首を振って、分からない、と答えた。どうやら質問の意図を勘違いしているようだったが、それでも救助するまで生き延びていてくれたことが嬉しく、思わず立花と豪快に笑った。
 すると、再び強い余震が起こり、裏の山肌が地滑りの兆候を見せ始めた。
「山肌が危険な状態です。土砂崩れを起こす可能性があります。一旦離れましょう」
「そのようじゃの、立花どん。それに、急いでヘリの手配をしたほうがよか」
 土砂災害が起これば、レスキュー車での避難は難しくなる。孤立することを想定して、二人は少女を抱えて工作車へ戻り、立花はヘリを要請した。

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※↑で文字化けする方(携帯からお読みになる方など)は、カテゴリーから<「うたかたごころ」第1章>→「第1章③」へお進み下さい。


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