大和ごころ
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第2章⑥ [「うたかたごころ」第2章]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第2章⑥の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
                     かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                     幼少の頃に毛利元就の友だった
 真田幸村♂…武田の若武者。佐助に大将と呼ばれている
 猿飛佐助♂…真田幸村に仕える上忍。愛子を警戒している

 


 媚薬が練りこまれた塩むすびに、微量の眠り薬が振りかけられた山菜。佐助から与えられた物を何の疑いも持たずに全て平らげた愛子は、恐怖さえ感じていたはずの佐助に抱きすくめられ、何故か情欲が沸き起こった自分に、激しく戸惑った。しかし、微睡(まどろ)みに誘われて体に力が入らず、情熱的に愛子の唇に吸い付く佐助から逃れることが出来ない。彼の唇が離れた一瞬の隙に、止めて、と何とか抗議しても、
「何故我を拒む。我と結ばれることを望んでいたのであろう」
 耳元でそう囁かれ、彼の体から逃れるどころか、逆に押し倒されてしまった。
 よく見ると、佐助の緑地迷彩の衣の下が、先ほどまで着用していた鎖帷子(くさりかたびら)ではなく、奥州の黒脛巾(くろはばき)組の忍装束のような、黒い衣に変わっている。忍は元々、諜報の際に鎖帷子を着用しない。音が鳴り易いうえ重量があり、戦場ならともかく、隠密には向かないからだ。しかし、真田の透破(すっぱ)と呼ばれる忍集団の中でも、忍隊長を勤める上忍の佐助は、特別なことが無い限り平常時でも、鎖帷子を装備している。鍛錬の為、という名目もあるが、忍でありながら戦場で表立って働くことの多い佐助は、高い報奨が出る首級として広く認知されている。その為、自国にいる時も戦闘態勢を解除できないのがその理由だ。
 だが稀に、この鎖帷子を外して任務に就くことがある。催眠と床技を使う時だ。
「我は望んでおったぞ」
 愛子の耳を噛み、ゆっくりと彼女の上に体重をかけて、佐助は衣越しに体を抱きしめる。
 鎖帷子を脱ぐと、佐助の体は意外にも華奢だ。枝から枝へと渡り歩くだけあって、無駄な肉は一切無い。しかし、他の武将のような逞しさはないものの、指だけで己の体重を支え、超人的な跳躍力を誇るという、忍特有の筋肉はしっかりと着いており、必要に応じ武将にも女にも化けられる。
 だが、佐助は今回、敢えて化けるのを辞めた。それは、大きな得物を振り回すほどの怪力の持ち主でありながら、一見華奢なあの男の体と己が、比較的良く似ていると踏んだ為だ。飄々としている己とは正反対のようだが、疑い深く、緑の衣を纏い、土色の髪を持つ細身の武将── 毛利元就は、意外にも佐助と共通する部分の多い男なのである。

 愛子を軟禁した座敷牢。そこへ急ぎ向かおうと、部屋へと続く廊下に差し掛かり、真田幸村は足を止めた。佐助のことだ。あの暦らしき物に書かれていた「かすが」の文字には、とっくに気付いているだろう。それでも任務の為と、委細承知のうえで彼女の臥所(ふしど)に潜っているのだ。あるいは、己の許婚との関係が気になるが故に、断腸の思いで彼女を抱いているのかもしれない。最初に目を覚ましたとき、彼女は「しょうじゅ」という名を口にした。そしてあの毛利の家紋。佐助の読みが正しければ、「しょうじゅ」とは毛利元就の幼名「松寿丸」のこと。だとすれば、彼女は彼を「兄さま」と呼べる家柄の者ということだ。そして佐助曰く、彼女は処女。敵を寝所に誘い込んで暗殺するくの一は、床技を多く持つ為、処女であることはまずない。故に商売女の線も消える。
「ま、安心してよ。一応身分が高いことを考慮して、体を穢すようなことはしないからさ」
 彼は、そう軽く言いはしたが、ひとつの床でおなごと過ごすこと事態が、すでに穢しているようなもの。それに少量とはいえ、警戒を解く為の媚薬と、幻覚を見せる為の眠り薬まで与えている。恋人を装っている佐助に対し、彼女のほうから体を求めてくることだって充分あり得る。佐助とて聖人君子ではない。そこから間違いが起こることも考えられる。
 あの美しいおなごと佐助が愛し合う。それを想像した幸村に沸き起こってきたのは、かすがへの罪悪感と、カッと己の中に感じた熱く嫌な何か。そして、佐助にそれを許したことへの後悔だった。とにかく一旦止めさせよう、そう決意した時、
「……?」
 ── 泣き声……。
 若い女性のすすり泣く声が聞こえ、幸村は部屋の近くに歩み寄り、そこで足を止めた。
「ごめんなさい……」
 あのおなごの声だった。殆ど意識を手放しかけてる中、やっと絞りだしたような謝罪。
「何故謝る」
 続いて聞こえてきたのは、あの中国の冷徹な智将の、優しい声色。恐らく佐助の出したものだろうが、相変わらず驚くほどよく似ている。
「また、会えるなんて……思わなかった……ごめんなさい……」
「我は何故謝るのかを聞いておる。いったいどこに行っておったのだ」
 戸に近付き、そっと開けると、片腕に彼女を抱き寄せ、沿うように敷布に横たわった佐助が、ちらりと幸村を見る。まだ入って来るな、という合図を見、幸村は息を殺して傍耳を立てた。普段は鎖帷子に覆われている佐助の指が、今は肌を露にし、彼女の頬を伝う涙を優しく拭っている。その彼女はというと、佐助の緑の衣に顔を埋め、まるで幼子が甘えるように、佐助にしがみ付いて泣いていた。ひとつの床で男女が抱き合っていることに変わりはないのだが、それは想像していたような破廉恥な光景ではなく、まるで幸村の兄が、初めて会った末の妹をあやしていた時のようだった。
「私……早く大人になりたいって……ずっと祈ってたの……そしたら……あの地震の後……瓦礫から助け出されたら……本当に時を……飛び越えてて……そこに20年いて……」
「地震? 二十年前の伊予の地震のことか?」
「16の時……松寿兄さまが……毛利元就だったって……知って……もう、会えないんだって……奥さんもらって……子供が出来て……長生きして……もう死んでしまったんだって……思って……、でももう一度会いたくて……恥ずかしくない人になりたくて……」
「……それで、今は何をしておる」
 徐々に眠り薬に負け始め、喋り疲れたのか、愛子はもう寝入りそうになっていた。
「大学出た後……Japan Air ……の……Flight ……Attendantに……もうすぐ国際線……」
 そこで、こてり、と眠ってしまった愛子言葉に、佐助と幸村は揃って首を傾げた。

「九州の島津と前田の風来坊、越後のかすがに安芸の毛利……どういう生き方したら、そういう繋がりができるだんろうね。しかも、すぐ謝るし。俺様、もうお手上げ」
 完全に眠ってしまった愛子を置いて、再び幸村の部屋に戻って来た佐助らは、これまで知り得た情報をひとまず整理してみた。が、結局、謎が謎を呼んでしまっただけ。
「しかも、あのおなごが……愛子殿が最後に口にされた異国の言葉。あの御仁がよく使われる言語に似ているような気がした」
「俺様も同意。物証は無いけど、この奇妙な所持品が外来の品だとしたら、あの旦那んとこと深い関わりがあっても不思議じゃないよね。まさか、あの旦那が仕向けた刺客とか」
「佐助! 政宗殿が望んでおられるのは、某との真っ向からの勝負と決着のはず!」
 奥州の伊達政宗。彼は幸村の二つ上と歳が近く、武術も互角。以前見えた戦で好敵手と認め合い、互いに決着を待ち望んでいる関係なのだが、彼は幸村と違い、伊達宗家の嫡男であり国主である。しかも、彼が狙っているのは天下。その為に自ら結成した忍隊、黒脛巾(くろはばき)組を駆使して、武田の動向に探りを入れてくる可能性は充分にあった。
「そりゃ大将とは絶対に自分が戦いたいと思ってるだろうね。けど、お屋形様はどうだか」
 真田幸村と戦うことと、武田の戦力を削ぐことは話が別だ。奥州勢も先の小田原戦で、豊臣軍を率いて迎え撃った石田三成に、こてんぱんにやられている。急ぎ自国の態勢を立て直すにしても、弱体化した奥州を叩きに来そうな輩の目を、暫く他へ向かせようと企むことだって、無いとは言えない。何しろ、伊達政宗は頭の切れる男なのだ。
「いくら自国の御為とはいえ、政宗殿がまさかそのような……」
 そこまで言いかけた幸村は、先ほどの佐助の言葉を思い出す。これも贔屓目、なのか。
「あの旦那じゃなくたって、他の国の誰かが同じことをしても、全然可笑しくないけどね」
 佐助の言う通りだったが、人を疑うことが余り得意でない幸村は、もうどの手がかりをどう解釈し、何を疑うべきなのか、完全に分からなくなってしまった。
 武田信玄の下で働いていた時は、真田や武田、果ては天下万民の為と、己の信ずるものに何の迷いもなく、がむしゃらに走ることができた。けれど、その信玄が病に倒れ、急遽大将として武田軍を預かることになり、幸村は己の判断が信じられなくなってきていた。
「お屋形様ならば、斯様(かよう)な時にはどのようなご判断をされるであろうか……」
 最近は何かに迷う度、出るのは答えではなく、その言葉だ。それがひたすら情けない、と自分でも分かっている。大将たる己がこんな調子では、折角信玄が育て上げた、天下に誇る騎馬隊も、いずれ幸村に愛想を尽かすだろう。だが、そう迷った時にどうすればいいか、それも、お屋形様なら、と考えてしまう己がいた。まさに、堂々巡りである。
「落ち込んでる暇なんてないよ、大将。俺様はどこで何の情報を集めてくればいいのさ」
 普段の気軽さが消え、佐助に厳しく突き放された幸村は、暫し逡巡して、こう命じた。
「お前は……政宗殿の所へ行け」

「第2章⑦」へ

※↑で文字化けする方(携帯からお読みになる方など)は、カテゴリーから<「うたかたごころ」第2章>→「第2章⑦」へお進み下さい。


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