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「透破(スッパ)マン!」(幸村+佐助) [拍手SS再録置き場]

 拍手御礼用で作成した短編小説「透破(スッパ)マン!」です。
 舞台は戦国なのですが、武将の方々には「戦国BASARA3武将人気投票」の集計結果がちゃんと届いているという、ツッコミどころ満載の設定です。
 今回も「捨て駒票」同様BLではありませんが、こちらは前作と違って、主従の愛が詰まっています(笑)
 ※八神様より頂きました挿絵のリンクを、作品末尾に貼りましたので、こちらも是非ご覧下さい♪

 拍手を下さった方、ありがとうございました!

『透破(スッパ)マン!』



「これは、有り得ないわ」
 甲斐の若虎、真田幸村の透破(すっぱ)である猿飛佐助は、主君宛の密書を携えて真田の屋敷に到着するなり、盛大なため息をついた。いや、実のところ、全国の名だたる武将それぞれに、同じ内容の書が送られているはずなので、厳密には密書とは言えないのだが。兎にも角にも、佐助の落胆の原因は、その密書の中味にあった。
「大将、入るよ」
 おう、と幸村の声が返ってくる。真田の主君である武田信玄が病に倒れ、武田を率いることになった若き主、幸村の呼び方を、最近佐助は、旦那から大将に変えた。
「大将……、例の『武将人気投票』の結果、貰ってきたよ」
「おぉ、そうか! ……どうした、佐助」
 密書を受け取ろうと佐助に駆け寄った幸村は、どこか拗ねたように、はい、と渡す己の透破の様子がいつもと違うことに気付く。
「どうもこうも……見てよ、これ」
 そう言って佐助が差し出した書状を手に取ると、幸村はバサッと音を立てて、豪快に文を広げた。黙って読み進める主を、佐助はちらりと見やる。そして、文字を追っている目が中盤に差し掛かると、なっ何と! と形の良い瞳をカッと見開き、全力で驚いた。
「でしょ!? どう思うよ、大将。 俺様、もう泣きそう」
「俺も納得がいかぬ! いくら病床にあられるとはいえ、お屋形様が投票結果に名を連ねておられぬなど、言語道断! この幸村、お屋形様の御為に、これよりこの集計を行った者に異議申し立てを……」
「ちょ、ちょっと、そうじゃないでしょ!」
 せっかく持ってきた文を最後まで読みもせず、いきなり拳を振り上げて立ち上がった幸村を、佐助は慌てて制した。
「これは最初から、今回出陣した人だけに投票するっていう決まりなんだって! よく見てよ。出陣見送ってここに名前が載ってない大物武将が、お屋形様以外にもいっぱいいるでしょうが!」
 そうなのか、ならば、と一応落ち着きを取り戻した幸村は、ではいったい何が不満なのか、と首を傾げる。そして、何を閃いたのか、あっ! と声を出すや、先ほど自分でぐしゃぐしゃに握り潰してしまった文を、もう一度読み始めた。
「なるほど、佐助……。確かに」
「……あのさ、本当に分かってる?」
 この主。根は真っ直ぐだが、時々頓珍漢なところがある。それを知っている佐助は、念の為、幸村が本当に問題を理解しているかを確認した。
「おう。佐助の票のことだろう」
 それを聞いて、佐助はほっとした。流石にこの主も、今回の戦で大将という立場に鍛えられたか。幸村の読解力が徐々に向上していることに、佐助は救われる思いがした。
「そう、何だってこの俺様がこんなこ……」
「佐助、案ずるな。俺は佐助を、政宗殿に勝るとも劣らぬ、戦国随一の戦力と思っている。俺のこの異常なまでの票数は、此度の戦における真田の軍勢の働きが、世に知れ渡った故のこと。さすれば、佐助の働きによって得た票と言っても過言ではない!」
「……は?」
 救われたと思ったのも束の間、やはり佐助の落胆の意味が分かっていないらしい幸村に、佐助は本気で泣きたいと思った。
「あのさ、大将。ひとつ確認なんだけど、俺様がいったい何者だか分かってるよね」
「この真田幸村の無二の家臣だ」
 いや、それは嬉しいんだけどさ、と佐助は続けた。
「透破でしょ! 大将、よく大声で俺様の名前呼んでくれちゃってるけど、それはもう、いくら言っても治らないからいい! でもね、俺様は忍なのよ。それも長なのよ、長!」
 猿飛佐助。そう、この男は、真田衆に身を置きながらも、実は信州戸隠出身の超人的能力を持った、甲賀(こうか)流忍術を皆伝されている上忍なのである。
「忍ってのは影に忍ぶものなの! 目立つの厳禁なの! それなのに、武将の人気投票で八番にいたら、目立ってしょうがないでしょうが!」
「し……しかし、風魔という忍や、かすが殿も……」
「風魔は元々伝説になっちゃってるでしょ。それに、かすがも目立つことばっかりやらかして、もともと忍に向いてないから、あの二人はしょうがないの!」
 勿論、佐助とて、幸村が武田の大将として、計らずも世に躍り出ることとなった以上、彼を高みに押し上げる為に、多少己が目立ってしまうことは、もとより覚悟の上だった。したがって、自分がこれほどの票を獲得してしまったことを、幸村のせいだとは微塵も思ってはいない……はずだったのだが。
「そうか、相すまぬ、佐助」
 突然幸村が両手をついて顔を伏せた。主に頭を下げられた佐助は、流石にぎょっとする。
「ちょ、ちょっと、どうしたのさ大将」
「佐助、俺はお前の名を書いた票を投じてしまった」
「……は!?」
 一瞬、幸村が何のことを言っているのか分からず、目を瞬かせた。しかし、次の瞬間、目の前にいるのが主ということも忘れて、佐助は腹の底から聞き返す。
「ちょっと、あんた! 何ちゃっかり自分も投票に参加してんのよ!」
「これは、投票したい者がおれば、誰が誰に投じてもよいと聞いたぞ」
「それは、そうだけど! あんた、だったら、それこそお屋形様の名前でも書いておけばよかったでしょうが。独眼竜だっていいし。それなのに、よりにもよって何で俺様……」
 確かに、今回参戦していない以上、武田信玄に投じたところで、幸村の票は無効になってしまっていただろう。正直言えば奥州の伊達政宗も、佐助は余り好いていない。しかし、透破である自分の名を書かれるよりは、マシというものだ。
「佐助、そうは言うが、お屋形様は既にその御名を天下に轟かせておいでだ。この幸村如きがわざわざ皆に声をかけずとも、票など日ノ本中から集まると思うておったのだ」
「……ちょっと待って、今何て言った?」
 幸村が声をかけずとも?
「ってことは、つまり、俺様の名前を書いて投票しただけじゃなくて、それを皆に言って回ったってこと? まさか皆にも、入れろ、とか声をかけたんじゃ……」
「いかにも!」
「…………」
 今度こそ佐助は絶句した。きっとこの主のことだ。名前のみならず、猿飛佐助という男が、いかにその能力を駆使して戦場を駆け回ったか、などのおまけも暴露して回ってしまったに違いない。しかしそれは、忍んでなんぼの透破としては致命傷である。風魔のように、忍の間でのみ伝わる伝説とは訳が違う。思いっきり表の歴史に名が出てしまったら、越後のかすがのことを笑えたものではない。
「……何か……、今までの隠密人生が全部パァ……」
 佐助は珍しく、その落胆を隠さずにがっくりと肩を落とした。そんな己の透破の姿に、流石の幸村も自分のやらかしたことの重大さに気がつく。
「さ、佐助、許せ……」
 幸村の姿に嘆息しつつ、紅い若虎と称させる主の真っ青な顔を見て、まぁ、しょうがないか、と佐助もそれ以上咎めるのを止めた。
「しかも俺は、己の三番と佐助の八番という順位は、むしろ逆だと感じた。それ故、もっと皆に言ってやるべきだったと思ってしまったのだ。俺は……本当に思慮が足らぬ……」
 そう言って項垂れる幸村に、佐助は思わず苦笑した。
 甲斐の透破に越後の軒猿(のきざる)、小田原の風魔に奥州の黒脛巾(くろはばき)。忍と名のつく傭兵は数多くいるが、これだけ主に思われる忍はきっと、世の中広しと言えど、自分だけだろう。結果はどうあれ、幸村が佐助のために、よかれと思ってしたことだ。
「いいよ、大将。恩に着る」
 佐助はにっと笑う。すると幸村は、意を決したように、再び拳を握って立ち上がった。
「案ずるな、佐助! この真田幸村、責任を持って佐助の名を揉み消して参る!」
「へ? 何するの?」
「佐助の名と武勇伝を、一刻も早く忘れるよう、皆に言ってくる!」
 言うなり障子戸をすぱんっ、と開けた幸村の背に、佐助は慌てて飛びついた。そんなことをされたら最後、人の記憶にがっつり刻まれるうえ、変人と思われて迷惑千万である。
「待った大将! それこそ、有り得ないから!」
 そう言って止める佐助と幸村のやりとりを聞き、離れにいた信玄は、床の中で苦笑した。


-END-


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