大和ごころ
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第4章⑲ [「うたかたごころ」第4章]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第4章⑲の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
 ※今回は出番なし        かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 島津義弘♂…60歳手前。九州出身の元特別救助(レスキュー)隊員。
         広島を離れ、関東で自分の喫茶店を開業した
 長曾我部元親♂…28歳。8年前に元服し、家督を継いで国主に。
            孫市の昔馴染みであり、政宗とも交友関係にある       
 石田三成♂…西軍の豊臣大将。豊臣秀吉の後継者
 前田慶次♂…26歳。愛子の幼馴染。愛子と交際していたが破局。
         フリーター。今は島津の喫茶店で働いている
         ※髪型は後ろでひとつに縛っているが、肩にかかる程度の長さ
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍
 真田幸村♂…23歳。愛子の秘密を知らないまま、愛子を守ると決断。
         しかし、毛利と離縁した舞姫と、政略結婚を提案される
 伊達政宗♂…25歳。元親から愛子のことを頼まれ、西軍から守ることに。
         佐助の話と、本人との会話から、愛子の秘密に気付いた
 毛利元就♂…29歳。幼い頃、初恋の相手の愛子と結婚の約束をしていた。 
         死んだと思っていた愛子と、20年ぶりの再会を果たす
 小早川秀秋…23歳。島津の店の調理師。現代では細身。
         食材へのこだわりが強く、若いが腕利きの料理人

 


 島津の自宅は、喫茶店がテナントとして入っているビルと、同じブロックに位置する戸建だった。中古の物件だったため建物自体は古いが、彼の所有する敷地内には、もう一軒大きな住宅が建てられるほどの広い空きスペースがあり、島津はそこを駐車場にしていた。
 何でも、近くを通っているバス通りの道幅拡張のため、その道沿いにあった小さな畑の持ち主が、高齢ということもあって余所へ移ったそうで、ちょうどその時期に関東に越してきた島津が、元は別の持ち主のものだった並びの土地を、同時に購入したのだという。
「そん当時は周り中まだ雑木林じゃったけんね。今ほど人もおらんかったし、バスも本数が少なかったとよ。今じゃったら土地も値上がって、とても手が出せんかったばい」
 慶次の所へ宿泊することになった元親と、愛子の部屋へと持っていく生活用品を借りに来た三成を含む、武将達6名を連れ、自宅の案内を始めた島津は、そう笑って窓を開けた。
「前は街頭もなくて夜は真っ暗での……あぁ、おまはんらの時代は、ないんが当たり前か」
「まぁそりゃそうだが……けど何でまたそんな場所で、わざわざ商売なんか始めたんだ?」
 お宝探しと称した、掘り出し物目当ての買い物が好きだった元親が、思わず尋ねた。人のいない場所に店を構えるなど、物売りならまだしも、客引き商売で普通は考えられない。
「愛子ちゃんが教えてくれたとよ。一番初めに関東暮らし始めたんは、あん子やったけん」
 島津の店から一番近い駅は、バスで5分強。女性の足で歩いても35分程度で到着する。
 だが、特急が停まらない小さな駅。町内で最も賑やかな所といえば、その駅前の小さな商店街のみという有様だった。当然、駅まで歩く者など滅多になく、たびたび不法投棄が問題になるほど。慶次の住む場所も店には近いが、アルバイトでも充分支払える家賃のため駅からはさらに遠く、車がなくては生活できない。逆に愛子は駅のすぐそばのアパートに住んでいるが、そこも駅前でバストイレ付きとは思えないほどの格安の家賃だった。
 ところが、そんな辺鄙だった街も、車の往来が激しくなってから様子が一変する。
 島津がこちらに越してきたころ、鈍行でも30分ほどの大きな駅に、全国的知名度を誇るブランド店が多数入った、巨大なショッピングモールが出来た。元々駅の近くには広い運動公園があったのだが、その敷地に併設するように建てられたため、駅の利用客が急増。それに対応するため電車の本数も大幅に増えた。そのうちに大型マンションが近隣駅に次々と建設され、通勤時に開かずの踏切が発生して沿線道路は渋滞。その影響は隣街の幹線道路にまで至り、愛子が暮らす小さな町内は、迂回路として急激に交通量が増加した。
「愛ちゃんがさ、渋滞するようになってバスが時間通りに来なくなったから、近い将来、絶対道路が拡張するよって言うんだよ。そしたら、この町は絶対大きくなると思うって」
 その当時慶次は、こんな鬱蒼とした場所に建つ自分のアパートに、まさかこれほどご近所さんができるとは予想もしていなかった。今では、徒歩圏内にコンビニまである。
「おいも不動産屋のじーさんが、いくらなんでもこん辺がそげんこつにならんじゃろ、言うとったからの。まぁ元々、地元ん人の憩いん場になれればええと思っとったくらいじゃっどん。空気のうまか所で、愛子ちゃんの近くならおいは何処でもよかと思っての」
「俺もじっちゃんもビックリしたよね。これ、この辺の4年前の写真だよ?」
 そう言って慶次が見せたものに、武将一同は驚いた。映っているのは島津の店の入り口。開店したばかりのころ、記念に撮影したのだというそれは、つい先ほどまで自分達がいたのだから間違えようはない。ところが、周りに映っている景色が、もはや別の街だった。
「この勢いで変化したら、たった四年を飛び越えても、俺様達並みの衝撃を受けそうだわ」
「いや、短い年月での変化のほうが、衝撃は大きいやもしれぬぞ。まるで浦島でござる」
 その証拠に佐助から、四百年後の今、上田城の天守がなくなっていたと聞かされても、幸村はさして驚かなかった。むしろ櫓(やぐら)門が残っていたことが奇跡だとすら思う。
 しかしもし、四年の歳月を飛び越えて天守が消滅していたら、狼狽していたに違いない。
「それにしても、俺は十年かかって奥州を整える準備をしてたってのに、四年でこれかよ」
 窓の外に煌々と並び光る街頭や、住宅の光を見つめて政宗が苦笑した。そこへ元就が、
「これでもまだ発展途上であろうな。隙間を埋めるように、人は街を成していく故」
 政宗の横に並び、行き交う車を眺めた。既に大国を治めていた彼の目は、やはり己らとは見方が違うものだ、と政宗も幸村もその言葉に感じ入る。そんな感慨深げな彼らに、
「おまはんらの歴史がここに繋がっとるように、こっから先もまた何処かへ繋がっとる。君らがどんくらい、こん地におるか分からんが、どの時代におっても人は歴史を作ることをば止められん。せっかくなんじゃ。ここでしかできんことを色々やってみんしゃい」
 そう言って島津は、ポケットから鍵を3本取り出すと、武将達に差し出した。
「これは……鍵……でござるか」
 佐助や政宗と顔を見合わせると、幸村は差し出されるままに、ひとつを手にとった。
「合鍵じゃ。お侍が6人もおったら、愛子ちゃんの家じゃ暮らせなか思ってな。昨日連絡をもらってすぐに、店で働いとる若いもんに作ってもろうてきたんよ。残りは追々じゃ」
 自分が不在でも自由に出入りして構わない。この家を自分の住みかとして、気のすむまでいるといい。そう言うなり豪快に幸村の肩を叩き、屈託なく笑って残りの2本も渡した。
「島津殿……このご恩、真田源次郎幸村が必ずお返し致しまする。忝(かたじけな)い」
 真っ先に頭を下げた幸村に、政宗や元就、元親らが感謝の眼差しを向け、さり気なく一番後ろへと下がった佐助を見て、やはり彼らは日本の誇りじゃ、と島津は彼らを見つめた。
 慶次はその時、幸村ひとりが頭を下げたことの意味が分からなかった。だが後から、自分より身分の低い者に頭(こうべ)を垂れることがない、国主である彼らの意を汲んだ幸村が、彼らよりも身分が低いため、代わって頭を下げたのだと知った。因みにこの場合、忍の佐助では身分が低すぎて武将の代わりは務まらない。故に、佐助は下座へ引いたのだ。
 政宗らを立てる幸村、その主を立てる佐助、そうして支え合いならが島津への礼を尽くそうとする国主達の清々しい魂。とても同年代とは思えない眩しさだと慶次は思った。
 そして、共に働く仲間に、この日本が誇る武者達を早く紹介したいと、気持ちが急いた。

「彼、ここの厨房で働いてる調理師さんね。小早川秀秋くん」
 翌朝、慶次に紹介された若者に、武将達は唖然とした。特に元就と三成は彼を見るなり、
「……金吾……貴様、金吾なのか?」
 怪訝な顔でしげしげと眺めた。当然慶次は、いや小早川秀秋だってば、と紹介し直す。
「こ……小早川殿……ずいぶんと痩せ申したな」
「あの……みなさん……どこかで会いましたっけ? ていうかいきなり『貴様』って……」
 鍋好きで戦嫌いの、どうしようもない引き籠り武将として有名だった彼。だが目の前の若者は、すらりとした細身の優男で、涼しげに揺れる前髪からは、色白の肌と少女のような瞳がきょとんと覗いている。慶次曰く、ハーフとよく間違われ、かなりモテるのだとか。
「貴様はそういう生き方が似合いよ、金吾。我が安芸に戻った暁には、すぐ計らってやる」
「僕、金吾じゃなくて秀秋ですってば。何ですか? 『空き』時間に戻ったら計るって」
 眉を寄せてそう言い返す小早川秀秋に、元就と三成は思わず目を見開いた。会話が噛み合わないのは相変わらずだが、元就に対して秀秋が言い返すということが、すでに信じられない。これまでなら少しでも冷たく見下ろせば、ろくに考えもせずに泣いて謝った男である。それが、怯えるどころか、初対面でその態度ってどうよ、と目で訴えてすらいる。
「で、僕の助手してくれる人って、どなたですか?」
「何!?」
 その秀秋の言葉に、元就らは驚愕した。彼に仕事を教わることすら抵抗があるのに。
「こやつの助手だと!?」
「あれ? 慶次くんの話だと、調理師免許も持ってないし、厨房の経験もないって……」
 どこかから引き抜いてきたなら話は別だが、普通なら後から来た者は彼の下に就く。
「…………」
 いよいよ絶句した元就と三成に代わり、まぁまぁ、と口を開いたのは元親だった。
「俺はぁ四国で魚釣ってたからよ。魚に関しちゃ任せてくれて構わねぇ。それと、こっちの赤毛の佐助って男は、山の物なら何でも口にしたことがあるってぐれぇ山の通だ。それにこの独眼の男に関しちゃ、料理はお偉いさんを唸らせるほどの腕を持ってるんだぜ」
 まぁ大体合ってるけどさ、と「山の通」と言われた佐助は、政宗と苦笑する。
「俺様の上司には力仕事と掃除関係は任せて大丈夫。子供のころから相当仕込まれてたし。あと、こちらの無愛想なおふたりさんは、台所と接客はだめだろうけど、勘定系なら文句なしの天下一だから、安心してよ。て、もしや俺様、初めて収入が安定するかも……」
 その腹いせに上司に力仕事ふってるんじゃないか、と秀秋は露骨に不安の色を顔に出す。
「け……慶次くん、礼儀正しい人たちだって聞いたんだけど……なんかこの人達ちょっと」
 怖いよ、と縋るように見やると、慶次のほうは、大丈夫大丈夫、と気楽に笑っている。
「万が一誰かとモメたら愛ちゃんに言えばいいよ。愛ちゃんには勝てないみたいだから」
 反論できずにぎろりと睨む元就を特に気にした風もなく、慶次はさっさとシフトを決め始める。武将達は、愛子はやはり安芸にはとんでもない切り札だったと、この時確証した。

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