大和ごころ
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第4章⑥ [「うたかたごころ」第4章]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第4章⑥の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
                    かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍。愛子の秘密を知った
 長曾我部元親♂…28歳。8年前に元服し、家督を継いで国主に。
            孫市の昔馴染みであり、政宗とも交友関係にある       
 前田利家♂…30代半ば。慶次の叔父
 毛利元就♂…29歳。幼い頃、初恋の相手の愛子と結婚の約束をしていた。 
         死んだと思っていた愛子と、20年ぶりの再会を果たす
 伊達政宗♂…25歳。元親から愛子のことを頼まれ、西軍から守ることに。
         佐助の話と、本人との会話から、愛子の秘密に気付いた
 真田幸村♂…23歳。愛子の秘密を知らないまま、愛子を守ると決断。
         しかし、毛利と離縁した舞姫と、政略結婚を提案される

 


 真田幸村が伊達政宗、毛利元就と共に安芸にいる、と愛子から知らされた猿飛佐助。兎にも角にも早く主と合流しなくては、と気は急いているのに、佐助は何故か、心が折れてしまったかのような、妙な感覚に襲われていた。見かねた元親に、大丈夫かい、と声をかけられるも、佐助はかつて天守閣があった広場を、呆然と見つめることしか出来ない。
「まぁ……ね……」
 己はここを拠点に、何度も任務に赴いた。時には戦いにあけくれ、命がけで守ってきた。己にとってはそう遠い話ではない。そう、つい先程まで、まさにそうしていたのだ。だが、
「俺様ってほら、主君があんな感じじゃない? だから結構、先々のことまでちゃぁんと考えて動いてたんだけどさ……副将だ何だ言われてても、所詮俺様は忍だったな、てね」
 目の前にあるのは、四百年後の上田城の跡。流石の佐助も、ここまで先のことは考えていなかったし、そもそも武士ではない己は、「末代」というものに幸村ほど興味が無かった。
「その点うちの大将って、意外と子孫のことまで思い巡らせたりもするからさ。もしかして俺様なんかより、よっぽどこういう景色を受け入れられるのかも、とか思ってね」
 行く行くは奥州を日ノ本の玄関とする、そんな野望を見せていた政宗などは、まさしくこの時代まで視野に入れていたに違いない。明日をも知れぬ命であることは、戦に出れば、武将も忍も同じだったが、やはり考えていることの大きさは違っていた、とつくづく思う。
「まぁな。でもよ、俺だってひ孫の代ぐれぇまでしか、手前ぇがしてやれることはねぇと思ってたからな。あの毛利の野郎でさえ、口にしてたのは、三百年の後の毛利家云々だ。流石に四百年後のことなんざ、誰も想像できねぇんだから、お前ぇさんと変わらねぇさ」
 と、元親は城内で犬の散歩をする子供を見る。だが佐助は、謙遜するなよ、と苦笑した。
「そう言うあんたのお宝の中には確か、何百年も前の古い物とかがあったよね」
 悠久の時、というものに思いを馳せることのない者は、そんな趣味など持たない。そもそも元親のやっていたことは、本人の言う、お宝漁り、とは少し違うと佐助は思っている。
「あんたって、その地で大事にされてるお宝は、絶対に持ち帰らない、って聞いてるぜ」
 人から忘れ去られたり、無碍に扱われていたり、確かそういうものばかりを集めていた。
「そりゃお前ぇ、お宝ってのは、持ち主がその価値を分かってる限り、それこそ永遠に生きるんだからよ。俺より価値が分かってる奴がいりゃ、俺が持ってる必要はねぇだろ」
「なるほどね。だからガラクタは、あんたの手にある限りガラクタじゃないってことか」
「まぁ俺もそんな偉そうなこと言えねぇんだがな。使い方が分からねぇもんばっかりだし、間違った使い方して壊しちまうこともあるしよ。お陰で修理の腕はだいぶついたもんだ」
 そう言って、笑いながら元親は己の佩楯 (はいだて※太腿を覆う鎧)を撫でる。以前から佐助は元親の鎧に対し、国主が身に着けるには随分粗末な物だ、と思っていたが、今ようやっとその理由が分かった気がした。きっと何かを作った余りや、古くなって解体した船の一部か何かを再利用して自分で作り、戦から帰ってはまた自分で直してきたのだろう。
「この時代に、どのくらい残ってるのかね。あんたが四国に残してきた物は」
 物だけじゃない。元親は廃れかけた技術や伝統を持つ人間も、随分と気にかけていた。時が乱世でなかったら、四国に連れ帰って保護したい者が、沢山いたに違いない。だが、伝統などというものは、その土地にいてこそ意味を成すものが多い。職人も同じだ。その土地に必要な物だったからこそ、その技術が欲せられる。しかし、その土地を離れるとそれらは価値が半減する。元親が四国の者達を、野郎共、と呼び大事にするのも、その為だ。
「そこに海がありゃ、あいつらの知識や技術は、きっと受け継がれてるだろうよ。俺が持ってた物そのものが無くたって、何らかの形であのお宝達が生きてりゃ、それでいい」
 それによ、と元親は佐助の横に立ち、同じように広場に植えられた木々を見上げた。
「万一、俺達の時代に戻れなかったら、新しく生まれ直したと思って、ここからまたお宝を探しに出りゃいいじゃねぇか。お前ぇさんなんか、俺にしてみりゃ一番のお宝だぜ」
「は? 俺様?」
「あぁ。あのかすがの話じゃ、忍も侍ももうこの世にはいねぇんだ。武士(もののふ)に関しちゃこっちに五人飛んで来てるが、忍は今、この世にお前ぇさんたったひとりだ」
 しかも忍術を齧った程度の下忍ではなく、戦国随一と名高い上忍。価値は計り知れない。
「……はぁ、あんたが仮大将のうちに、俺様、給料たっぷり貰っとくんだったわ」
 そう軽口を叩くも、今共にあるのが西海の鬼で心底救われた、と佐助は思った。雑賀孫市が、問題をひとりで背負い込む鶴姫に、元親を頼れ、と言ったのも分かる気がする。そして、常に大きなことを考えているあの伊達政宗が、元親と馬が合うということも。
「幸村を差し置いてそりゃできねぇ、と格好良く言いてぇところだが、俺は今、文無しなんでな。何だったら愛子にでも頼んでみるといい。あいつはあんたを尊敬してるしよ」
 尊敬。そんな言葉を向けられたことのない佐助は、何とも居心地悪そうな顔をする。
「尊敬って……あの人ほんと危機感ないよね。俺様に喉切られたこと、忘れてんのかな」
 小田原で鶴姫と愛子の身柄を交渉する際、見せしめに愛子の喉を佐助は軽く切った。
「それでも命がけで守ってたんだろ? あいつは俺と幸村に、お前ぇさんがいかに体を張って助けてくれたか力説して、礼をしてぇって散々言ってたぜ。忍ってのは、そういう情を動かされるような言葉を嫌うのは知ってるがよ、礼は受けてもいいんじゃねぇのか」
 四国から逃げてきた船の上で再会した折、嬉しそうに駆け寄ってきた愛子を見て、佐助は脳裏にふと、幸村の顔が浮かんだのを思い出す。忍に情は必要ない、と常から部下に言って聞かせ、自身もそうやって生きてきた己が、その時、うっかりと彼女の頭を撫でたい衝動にかられ、心の底で戸惑ったのを覚えている。勿論、表情には微塵も出さなかったが。
「そうやって感情を押し殺しちまうところが、愛子からすると確かに毛利に似てるかもな」
 歳も同じ、ニ十九。親との縁も薄く、頭は回る為頼られがちだが、戦い方は冷酷非情。
「ってことは、俺様もいつかは西海の鬼さんと、火花を散らすかもしれないってことかな」
「はは、あいつと俺は、周りが思ってるほど悪い仲じゃねぇよ。俺に関しちゃ安心しな」
 俺に関しては。それは、もう一方の輩のほうは油断ならないということか。つまり──。
「俺様が誰かと火花を散らす、としたら……」
「毛利の野郎とだろうな。こいつぁ楽しみだぜ」
 元就と似る己が情を動かし、いずれ奪い合うとしたら、思い当たるのはひとつしかない。
 ── 愛子、か。
 また随分と厄介なことをしてくれたな、と佐助はその笑顔を思い出して、眉を寄せた。

 前田利家宅。ひとまず、一番薄着をしている幸村が、鎧を兼ねた紅い衣を脱いだのだが。
「……あの、すみません、真田さん。出来ればこれ、先に洗濯したほうがいいかも……」
 今朝まで自分の城にいた元就と違い、幸村はずっと野営をしていた。しかも元々汗っかきなうえ向こうは真夏だった。衣はおろか、彼の体からも漂う悪臭に、一同は顔を顰める。
「も……申し訳ござらん、愛子殿。一昨日水を浴びたのが最後であった故、某も気になってはいたのでござるが……ま、前田殿。後程、外で水をお借りしても宜しいか」
 非常に恥ずかしそうにする幸村に、利家は笑って慶次のTシャツを渡す。
「真冬に外で水浴びなんかしたら風邪ひいちまうから、体洗ってゆっくり風呂に浸かっていきな。慶次も愛子ちゃんも、小さい頃は泥遊びしてそのままうちの風呂に入ってたんだ。気にすることはないさ。それより、これちょっと着てみてくれないかな」
 渡された物をどうしていいか分からない幸村に、愛子が着方を説明しながら笑い出す。
「そうそう。まつお姉ちゃんが、そのままじゃ施設に帰せないからって急いで洗濯して」
 全身泥まみれの愛子と慶次の服を剥ぎ取ったまつは、愛子を風呂に連れて行き、慶次は予洗いする泥の洗濯物と一緒に桶に放り込まれた。確か小学校低学年の、夏休みの話だ。
「元々おてんばが過ぎるおなごではあったが、こちらに来て更に羽目をはずしおったか」
 呆れたように苦笑する元就に、あんたといる時もおてんばだったか、と利家が笑う。
「木登りしたり、泳ぎに行って真っ黒になって帰って来たり……真田さん、どうですか?」
「追いかけっこしてすっ転んで服破いた時は、流石に泣いてたよな……少しブカブカか?」
 余りにも姫らしからぬ幼少時代の愛子の話に、幸村はぽかんと口を開け、愛子と利家の問いに反応が遅れた。政宗も、俺より凄いのがいたと小十郎に言いてぇ、と苦笑している。
「さ……さぁ、丁度いい着心地というものが分からぬ故、己に合っているのかどうか……」
 それもそうですね、と言いつつ、愛子は幸村にトップスを羽織らせみる。どうやら腕は長いようで着丈ほど袖が余らない。腕の筋肉も逞しいので、肘を曲げると余裕がなくなる。
 幸村の顔のすぐ近くでボタンを留める愛子。彼女の呼吸の近さに顔を赤くした幸村は、
「下着だけLにして上はXLでよさそうか。下は……下も筋肉ありそうだな。Lかなぁ」
 利家の言葉で、己の下半身へと視線を移す愛子に、恥ずかしさで叫びそうになる。だが、
「ならば下は独眼竜が試せばよかろう。足の長い伊達が入れば、後はどうとでもなる。それより、真田。貴様はとにかく先に湯殿を借りよ。その悪臭、いい加減叶わぬわ」
 元就の容赦の無い言葉に、ときめいていた心が一気に折れた。何も愛子の前でそこまで言わずとも、と嘆く幸村を慰めるように、給湯スイッチから湯沸し完了の音楽が流れた。

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