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寺子屋ばさら①「大谷さんと愉快な不幸達」 [拍手SS再録置き場]

 この作品は、拍手御礼用で作成した短編小説「寺子屋ばさら」シリーズ①の『大谷さんと愉快な不幸達』です。
 戦国時代(「戦国BASARA3」の時代)が終焉を向かえ、舞台が江戸時代に突入している、これまでとは一風変わったSSで、元服前の蒼紅瀬戸内金銀を軸にした「寺子屋ばさら」シリーズの第1話目となっております(笑)
 今回は、猿飛佐助オカンと、片倉小十郎オトンの過剰な主従愛が全開で、キャラ崩壊のみならず、日本史捏造も半端ない作品です。(←かなり大事) 
 その点をご了承頂いたうえ、宜しければどうぞ、お付き合い下さいませ♪
 最後に拍手を下さった方々、本当にありがとうございました。

<「大谷さんと愉快な不幸達」の登場人物>
 大谷吉継♂…元豊臣軍師。戦国時代に病を発症。かさむ治療代を稼ぐ為、
         武家のお坊ちゃんを狙った名門塾「寺子屋ばさら」を設立。
 伊達梵天丸(ぼんてんまる)♂…元服前の伊達政宗。金持ちのお坊ちゃま。
                    奥州では「独眼の小竜」と呼ばれている
 真田弁丸(べんまる)♂…元服前の真田幸村。小遣いの使い方が下手で、
                「帳簿まで紅い甲斐のちび虎」と呼ばれている
 片倉小十郎♂…梵天丸のお目付け役。主(あるじ)を馬鹿にされると、
          梵天丸でさえ手が付けられないほど憤慨して、暴走する
 猿飛佐助♂…弁丸に仕える上忍。お目付け役兼護衛隊長も務めており、
         弁丸をモメ事に巻き込む梵天丸・弥三郎を年中説教している




「寺子屋ばさら」①
『大谷さんと愉快な不幸達』



 戦国時代が終焉を迎え、到来した太平の世。
 天下分け目の(いくさ)は思ったより……というか、それはそれは地味に終わり、あの乱世における血生臭い戦の数々は、いったい何だったのかと、誰もが思うほどの呆気(あっけ)なさだった。
  だが、犠牲こそ少なかったものの、乱世を乗り越えた代償はそれなりに大きく、各国の国力はだいぶ疲弊していた。そのうえ、平和な時代の到来を待ち望んでいた、民や兵達の喜び方が半端ではなく、士気(しき)の急降下した軍は、もはや兵力として使い物にならない有様(ありさま)。その為、江戸の世に不満のある大名達も、すぐに新たな戦をしかけることが出来ずにいた。
 そのうちに、全国の武家の間で新たに発生した流行が、「次世代の英才教育」である。
 ある者は、まだ安定しない徳川政権の下克上を狙い、そしてある者は、新しい幕府での出世を狙って、じわじわと始まった「お受験合戦」。それに備え、全国の殿様奥方様は、とにかく息子達に、学問や武術を身に着けさせようと、躍起になって名門の学び舎を探した。
 そして、その流行に目をつけたのが、元豊臣軍師、大谷吉継(よしつぐ)である。
 長患いでろくに戦働きが出来なかった彼は、かさむ治療代を稼ぐ為、役人の登用試験対策や、(おも)(まつりごと)を専門とする学問塾を創設。国中から一流師範を集め、更に「秀吉は百姓から天下人に」と竹中流教育を宣伝文句に(うた)うと、評判は瞬く間に全国に広まった。
 これが、この物語の舞台となる「寺子屋ばさら」である。

「ぼ……梵天丸(ぼんてんまる)殿……」
 前の席に座る隻眼(せきがん)の少年、伊達の梵天丸から回された書の下に、もう一枚の紙の感触がある。自分が一番後ろの席なので、誤って余分に回ってきたのかと思った真田弁丸(べんまる)は、己の分の書を机に置き、余分を師範の元に持って行こうと立ち上がりかけ、そこで固まった。
「Aha? …… ──っ!!」
「は……破廉っ ──んぐ!!」
 書の下にあった物に仰天し、見る見る顔を赤らめて絶叫しそうになった弁丸。しかし、それを見た梵天丸が、立ち上がるや後ろを振り返り、弁丸の顔を思い切りひっぱたいた。
「いかがされました? 梵天丸殿」
 スパーンという小気味のいい音に驚いた、師範の立花宗重(むねしげ)が、毛利松寿丸(しょうじゅまる)の漢籍の質疑を中断させて声をかけてきた。見ると、部屋中の生徒が皆ふたりを振り返っている。
「何でもねぇよ。真田の顔に蚊が止まってたんだ。そうだろ? 真田」
 お前、空気読めよ、と竜の目に(にら)まれた弁丸は、
「さ……左様(さよう)にござる」
 (いささ)か納得がいかず、ふいと瞳を逸らすも小さく同意する。隻眼の少年は、OK! と不敵な笑みを浮かべて、弁丸の肩を叩いた。

「ちょっと! 片倉の旦那!」
 講談終了後、弁丸を迎えにやって来た真田の忍・猿飛佐助は、(あるじ)()れ上がった左(ほほ)を見るや、立花に詰め寄り犯人を聞きだすと、伊達家の忠臣・片倉小十郎に喰ってかかった。
「何だ、猿飛」
「何だじゃないでしょ! お宅の梵々(ぼんぼん)がまたやってくれたそうじゃないの! その坊ちゃんがうちの旦那巻き込むのこれで何度目さ! いい加減にしてくんない!?」
 びしっ、と弁丸の頬を指差しながら、佐助が伊達主従に突き出したのは、弁丸が先ほど梵天丸から受け取ったという「枕絵(まくらえ)(※オトナの浮世絵)」である。どうやら何処(どこ)かから飛んできたのを拾ってきたらしく、既にぼろぼろのそれをちらりと一瞥(いちべつ)すると、片倉はぎろりと佐助を(にら)み、
「それがどうかしたか。それより貴様、忍の分際で、伊達宗家ご嫡男の梵天丸様に向かって『ぼんぼん』とは、いい度胸じゃねぇか。くだらねぇ洒落なんざ思いつきやがって」
 己の主・梵天丸を(かば)って佐助を牽制(けんせい)する。しかし、梵天丸坊ちゃんを「梵々」とは上手いじゃねぇか、と砂粒ほどだけ笑った心が、うっかり顔に出てしまった小十郎。それを見逃さなかった梵天丸は、お前覚えてろよ、と小十郎の背を睨んで青筋を立てた。
「何? じゃぁ『(たつ)の落とし子』って呼ばれたい? あ、そっか。毎日毎日うちの旦那にちょっかい出して、枕絵なんか渡すくらいだから、真田の嫁になりたいってことか」
 人間の場合、子孫を残すのは、嫁、即ち女の役割だが、タツノオトシゴは雌が産卵し、雄が腹の中で卵を育てることから、夫が出産しているように見えるのは有名な話である。
「っんの野郎……黙って聞いてりゃ……フン。六文以上の金勘定が苦手で、帳簿まで紅いちび虎は、梵天丸様のような有閑(ゆうかん)なご子息でなけりゃ、お相手できねぇだろうが」
 実家の家紋が六文銭(ろくもんせん)の弁丸は、鉢巻や着物も火炎のような紅色を好む。が、貰った小遣いを後先考えずすぐに人にやってしまう為、小遣い帳簿の字まで真っ赤であることも有名。
「……あんたもただじゃ起きないね、右目の旦那。まぁ、精々(せいぜい)気をつけることだね。大事な唯一の左目が、色事(いろごと)(ふさ)がんないようさ。あ、もう手遅れか。煩悩(ぼんのう)まみれの梵々は」
 大事な主の弁丸をけちょんけちょんに言われ、伊達主従に真っ黒な笑みを、遠慮なくお見舞いする猿飛佐助。そんな忍の様子に、慌てたのは彼の主で、当事者の弁丸である。
「さ、佐助……何もそこまで言わずとも……梵天丸殿は、決して煩悩まみれなどでは……」
 そもそも梵天丸が弁丸に回した枕絵は、実は長曾我部の嫡男である弥三郎(やさぶろう)が、前日に拾ってきた物。それを、お前らにも見せてやる、と弥三郎が言い出したのが全ての発端だ。
 勿論弁丸は、そのような破廉恥な物は見ない、と断固拒否した。しかし弥三郎は、いずれ世継(よつぎ)を儲けなければならない身なら、後学の為に見ておいたほうがいい、と譲らない。
 結局それに押し切られ、先に枕絵を受け取っていた梵天丸は、自分は見たから、と講義で回ってきた書に隠して、弁丸に渡した。それも梵天丸に特段他意があったわけではなく、帰りはそれぞれに迎えが来る為、他に渡す機会が無いから、というだけの話だった。だが、「講義中に破廉恥な絵が回ってくる」という、奇襲を受けた弁丸は、驚愕の余り絶叫しそうになり、それを察知した梵天丸が、蚊の退治を装って平手打ちした、という次第だ。
 この経緯から言えば、「煩悩まみれ」は寧ろ、元凶の弥三郎の方だと言える。しかし、
「てめぇ……さっさと訂正しねぇと、貴様の大事な主の右目を頂くことになるぜ」 
 佐助の言葉に堪忍袋の緒が切れた小十郎は、怒りの炎をその目に(たぎ)らせ、抜刀(ばっとう)の構えをとって真田主従を睨み付ける。そんな家臣の様子に、今度は梵天丸の方がぎょっとした。
「お……おぃ、wait! 小十郎! そんな大した事じゃねぇんだよ」
 当事者である梵天丸と弁丸は、互いに悪意がないことを分かっている。それなのに、そのふたりを差し置き、殺気全開で対決を始めた保護者達は、今にも得物(えもの)を抜く構えだ。
「そういう(たぐい)の冗談は、俺様マジで怒っちゃうよ。ウチの旦那の右目もぎ取ったって、梵々の目が治るわけじゃなし。病気になったのは、あんたの管理不行き届きでしょうが」
「なら、このちび虎の財布の仕分けがなってねぇのも、てめぇの監督不行届きじゃねぇのか。そんな寒い懐で、弁※の字の名を貰っちまって気の毒だぜ」(※「わきまえる」の意)
 容赦なく地雷を踏まれて、大いに傷ついたちび武者達。互いの保護者が言ったことに目で謝罪をしつつも、落ち込みすぎて、更に加熱する保護者達を、もはや止める気力もない。
「はぁ!? 自分の為に働いてくれた人に、色々振舞っちゃうことの何処が気の毒なのさ! っていうかうちの旦那は、懐が寒いんじゃなくて、広いんだっつーの! 本人にとっちゃ不幸どころか、寧ろ幸せなことなんだから、あんたらの不幸と一緒にしないでよね!」
「おぃ! 梵天丸様はこの試練を味方に変えて、更なる鍛錬と勉学に励み、奥州じゃ『独眼の小竜』と呼ばれてんだ。梵天丸様が不幸だとか勝手に決めるんじゃねぇ!!」
 まさに一触即発の事態。今にも打刀(うちがたな)甲賀(こうか)手裏剣が交わりそうな、険悪な雰囲気の中、
「ヒィーヒャヒャヒャヒャ! 不幸か、不幸か! ヒャヒャヒャ!」
 突然第三の狂い笑いが割って入ってきた。何事かと、佐助と小十郎が(そろ)って見ると、寺子屋長の大谷吉継(よしつぐ)が、輿(こし)の上で胡坐をかき、不幸と聞いて、何故か爆笑している。
「やべぇぞ、真田」
「まずいでござるな、梵天丸殿」
 この「寺子屋ばさら」では子供達の間で、ある噂が誠しやかに流れていた。何でも「大谷師範が大喜びすると、その場に居合わせた全員が不幸になる」という。
「やれ、不幸な梵天丸よ。病とは存外に悪いものではない。我も病、病。戦働き叶わず、右目はおろか、もはや己の全身が今はどのような形貌(けいぼう)を成しているのか、我にも分からぬ。そして弁財天(べんざいてん)(※近世以降「財宝神」としても崇められる)の名の一字を頂きながら、貧乏神にとり憑かれた不幸な弁丸よ。我も金欠。かさむ治癒代から解放される時、これ即ち我が死す時よ。まっこと愉快、愉快」
 そう言って本人はまたヒャヒャと笑う。しかし誰も、そうですね、とは笑えない。
「なれど、不幸(ゆえ)に我は戦で死なず、金を工面する知恵をつけた。不幸とは良きものよ」
 何となく何も言えず、大谷の黒い空気に圧倒されて、閉口していた伊達主従と真田主従。
 大谷は彼の体の中で、唯一他者に(さら)している、その双眸(そうぼう)をきらりと光らせ、
(ぬし)らにも、さんざめく不幸を」
 そう言い置くと、再びヒャヒャヒャと笑いながら去っていく。彼の言葉通り、その場には不幸な空気が立ち込め、ふたりのちび武者は、噂が真実だったことを知ったのであった。

-END-

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