大和ごころ
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第5章-幸村編-② [「うたかたごころ」第5章-幸村編-]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第5章-幸村編-②の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
 ※今回は出番なし。        かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 前田慶次♂…26歳。愛子の幼馴染。愛子と交際していたが破局。
         フリーター。今は島津の喫茶店で働いている
         ※髪型は後ろでひとつに縛っているが、肩にかかる程度の長さ
 小早川秀秋…23歳。島津の店の調理師。現代では細身。
         食材へのこだわりが強く、若いが腕利きの料理人
 真田幸村♂…23歳。戦国一の兵(つわもの)と称された武将。
 (真田源次郎)現代では、島津の店で雑用をして働いている。
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍。
 (長野佐助) 島津の店で厨房を手伝いながら、ホールもこなす
 伊達政宗♂…25歳。島津の店では主に厨房を手伝っている。
         眼帯はドラッグストアで買った物に替えている
 


「おはようさん! あれ、どうしたの? 皆さんお揃いで」
 真田主従、政宗と共に、今日は休暇のはずの小早川秀秋が店内に顔を見せるや否や、開店準備をしていた慶次が、珍しい面子じゃん、と笑って一同の顔を眺めた。珍しい、とは恐らく、自分が混じっていることだろうと察した秀秋が、お土産だよ、と紙袋を差し出しながらカウンターに腰掛けて笑う。そして、その中身を見た慶次は、思わず目を丸くした。
「え!? 何この大量のおにぎり! っていうか『銀しゃり』じゃん!」
「真田さんがね、そこのおにぎりが食べたいって言うから、今朝一緒に行って来たんだ。平日の朝だってのに、結構並んでてびっくりしたよ。まぁ、回転も早かったけどね」
「折角の休日に案内(あない)をお頼み致し、誠に忝(かたじけの)うござった」
「そんなに気を使わないで下さいよ。僕もあの店気になってたんで、ちょうどよかったし」
 朝待ち合わせてから、何度も礼を言われて、流石の秀秋も困ったように頬をかいた。
「なれど……馳走にまでなってしまい……本来ならばお誘いした某が負担すべきことを」
「え!? じゃぁこのお土産も、もしかして全部秀くんのおごりってこと!?」
 持ち帰り用にパッケージされた、数人用のおにぎりを紙袋から取り出しながら、慶次が仰天して幸村を見た。その通りだ、と声高に肯定するのも野暮のような気がして、それでも申し訳なさそうに俯くことで、秀秋に出費を強いてしまったことを告げる。
 食べに行く物が握り飯であること、平民の間で人気があること、愛子が頻繁に訪れているらしいことから、それほど敷居の高い店ではないだろう、と気軽な構えで赴いたのが間違いだった。敷居自体は確かに高くはなかったが、品書きの値を見た途端、たかが握り飯、と下調べを怠った己を、幸村は多いに悔やんだ。何しろ佐助であれば、米の他に三品を揃えた膳をこしらえてしまえるほどの値が、握り飯たったひとつにつけられていたのだから。
「だから、別に気にしなくていいですって。真田さん達もしかして知らないのかもしれないけど、僕、家賃は実家が払ってくれてるから、自腹の生活費は実は少ないんですよね」
 後の収入は全部自由に使えるので、と恥ずかしそうに話す秀秋に、慶次が苦笑する。
「そうそう、実は秀くんって金持ちのお坊ちゃまなんだよ。それこそ、普通だったら俺なんかと一緒に働かなくても、いい所に就職できちゃうコネも持ってるはずなんだけどさ」
「ちょっと止めてよ、慶次くん。僕、坊ちゃんだからきっと根性がないだの何だの、学校とか体験就労とかで、ずいぶんと嫌なこと言われて、結構辛い思いしたんだからね」
「分かってるって、愛ちゃんから聞いてるよ」
 愛子と秀秋。戦国時代の小早川秀秋を知る武将達から見れば、一見すると何の共通点もなさそうなふたりだったが、実は一緒に食事に出かけるほど仲がいい。共にやりたい仕事に就くため、必死で勉強してきた者同士、彼らは非常に馬が合うとかで、ふたりで会話をすると必ず仕事談義に花が咲くのだという。関係を訝(いぶか)しんだ元就に、未だ定職に就いていない慶次が、そう寂しげに説明していたのを、幸村も他の武将も目撃している。
 幸村は慶次の気持ちが、何となく分かる気がした。厨房を仕切る秀秋は、店の命運を握る。一番簡単な仕事しかしていない幸村には、足軽にとっての軍師の如き遠い存在。もはや愛子に至っては、大陸でも名が通る大組織の一員なのだから、文字通り雲の上の人だ。
 その愛子が贔屓にし、店の軍師である秀秋が気にかけていた握り飯の店、『銀しゃり』。
「某、握り飯が斯様に奥深い物であるとは思いもよらず、誠に恥ずかしい限りでござる」
 突然深いため息と共に肩を落とした幸村を見やり、慶次が、何のこと? と政宗に問う。
「『銀しゃり』の握り飯と同じ物を作って、花見に持って行くつもりだったんだとよ」
「作る? わざわざ作るの? 買わないで?」
 味と場所の下見で行ったんじゃなくて? と首を捻る慶次に、幸村は自嘲気味にこぼす。
「甲斐の座敷牢に捕えていた時、某は薬を混ぜた握り飯を賄(まかな)い申した。それ以外でも粗食が続いた上に、武田の都合で小田原までは忍と野営をさせてしまった故……」
「俺様に言わせれば、忍の野営は煮炊きなんかしないんだから、充分贅沢だったけどね」
「佐助、吉川(きっかわ)の姫御に散々ご不便を強いておきながら、こちらではいつまで世話になるかわからぬのだ。せめて愛子殿が喜ばれる礼を何か致さねば、気が収まらぬ」
「あぁ、それで真田さん、愛ちゃんのことあれこれ僕に聞いてきたんだ。な~んだ、てっきり愛ちゃんをお嫁さんに狙ってるのかと思ってたよ。お侍でも恋愛するんだぁって」
 その秀秋の言葉に幸村は一瞬硬直すると、後ろにひっくり返りそうな勢いで立ち上がる。
「っ……れれれれれれ……恋あっ!!」
「真田さん……ほうき持ったおじさんじゃないんだから、そんなレレレとか言わなくても」
 あまりにも初心な反応を示す幸村に、慶次は思わず苦笑いして佐助を見る。この人、自分で気付いてないの? と目線で尋ねれば、気付ける人だと思う? とこちらも苦笑い。
 何の話だ、と本当に自分ひとり分かっていない幸村に、今度は政宗が、くく、と笑った。
「まぁどっちにしろ、愛子にその気がなきゃ、真田の片想いはどうにもならねぇだろ」
 片想い。
 その言葉に喉元まで反論が出かかったが、幸村はあることを思い出してそれを飲み込む。
 愛子と松寿丸の墓標の前で、政宗と久々に再会した時のこと。幸村は本人の目の前で、愛子は武田にも己にも必要なおなごだと言った。思い返せば顔から火が出るほど恥ずかしい話だが、何も恋愛感情があると告白したつもりはなかった。幸村にとって愛子は、負け戦から這い上がらせてくれた恩人。強いて「魅力を感じている」と言うなら、本人よりも、学問に優れながら謙虚な彼女から、物事を学ぶことそれ事態である、と己は認識している。
 だがあの時、俺も同じだ、と愛子を渡そうとしなかった政宗のほうは、どうも己とは様子が違う気がしてならない。単純に人質としての利用価値ではなく、よもや肉体を……。
 いやまさか、とよぎる考えを振り払うも、時折政宗と愛子が視線を交わす瞬間を目の当たりにすると胸騒ぎがし、その度に、女をあまり好まないことで有名な政宗が、愛子を欲することなどあるまい、と幸村は己に言い聞かせた。だが、そうして納得した次の瞬間には、では愛子のほうが政宗を欲していたらと、今度はまた別の不安に襲われる。
「ま、政宗殿とて、衆道であられることを愛子殿がご存知では、思うようになりますまい」
「俺は両刀だ。あいつもそれは知ってるはずだぜ? 第一俺の話は、お前に関係ねぇだろ」
「そ……それは……も、申し訳ござらぬ……」
 不機嫌な表情を見せた政宗の声音に、幸村はうな垂れた。確かに、今話題になっているのは己であって、政宗ではない。政宗と愛子の関係を気にするあまり、慣れない探りなんぞを入れたせいで、危うく彼に恥をかかせるところだったのだから、彼が怒るのは当前だ。
 しかも無二の好敵手である政宗に、関係ない、と突き放されたことで、また別の意味で気落ちした己があまりにも幼く、幸村は何たる情けなさ、ともはや顔も上げられなかった。
「竜の旦那、うちの大将をあんまり苛めないでよね。この人はあんたに嫌われるのが一番堪えるんだからさ。今日は開店から閉店まで仕事なのに、気落ちされたら困るっての」
 明らかに自己嫌悪に陥っている主を見かねて、さり気なく仲裁に入りながら、佐助が政宗を持ち上げる。とは言っても、幸村が政宗を敬愛しているのは事実なので、別におべっかって訳でもないよ、と佐助は政宗に向けて眉をひょいと動かした。その佐助の仕草を見た政宗が、小さく苦笑したところを見ると、言わんとしたことがちゃんと伝わったらしい。
 そのやりとりを横目で見た幸村は、やはりどうにも、形容のし難いもやを胸の内に感じた。時に、主の己よりも早く佐助の意を理解し、大将としての格の違いを、度々見せ付ける政宗。それでもこれまでは、そういった触発に血が騒ぐことこそあれど、不快に感じたことは一度たりともなかった。だが今、己の胸中を巣食う物は、何と醜く浅ましいものか。
 幸村は政宗に抱いているものが、果たして誠の憧憬なのか、憎悪なのか、それとも別の何かなのか分からず、あの暗い水底(みなそこ)へと、再び沈んでしまった気がした。

「なぁ」
 閉店後、掃除用具を片付けに行った幸村と入れ替わりで、ホールに姿を現した政宗は、
「花見の日、俺と出番を替われって言ったら、アンタは俺をしつこく詮索しそうだな」
 ひとりせっせと椅子をテーブルに上げる佐助に、まるで独り言のように話しかけた。
「忍ってものを勘違いしてない? あんたみたいな面倒くさい相手に、詮索とかかけひきとか、少なくとも俺様はいちいちしないね。単刀直入に聞くさ。何を企んでる、ってね」
 作業の手を止めずに答えた佐助に、そのわりには回りくどい聞き方だな、と政宗は笑う。
「企んでるのはアンタだろ。あのかすがってのに、本気でほの字なわけじゃねぇくせによ」
「あらら」
 バレてたか、と口ではおどけた佐助だが、その瞳は手裏剣を構えたような殺気を宿した。
「なぁ、取引しねぇか。俺をけん制するより、アンタにも好都合なはずだぜ?」
 刺すような視線を平然と受け止める政宗は、更に佐助を挑発するかの如く、瞳を細める。
「内容によりけりだね。俺様は主と違って、お人好しじゃないんで」
 こちらに来てから、やたらと緩い態度を見せることが多かった佐助の、久々に見る研ぎ澄まされた上忍の鋭気に、政宗は、上等、と口角を上げた。

「第5章-幸村編-③」へ

※↑で文字化けする方(携帯からお読みになる方など)は、カテゴリーから<「うたかたごころ」第5章-幸村編->→「第5章-幸村編-③」へお進み下さい。


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