大和ごころ
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第5章-幸村編-⑧ [「うたかたごころ」第5章-幸村編-]

「うたかたごころ」を初めてお読みになる方は、必ず(はじめに)をお読み下さい。

<第5章-幸村編-⑧の登場人物>
 吉川愛子(よしかわ あいこ)♀…25歳。主人公。Japan Air の客室乗務員。
                    かつては安芸吉川(きっかわ)の姫。
                    幼少の頃に毛利元就の友だった
 真田幸村♂…23歳。戦国一の兵(つわもの)と称された武将。
 (真田源次郎)現代では、島津の店で雑用をして働いている。
 伊達政宗♂…25歳。島津の店では主に厨房を手伝っている。
         眼帯はドラッグストアで買った物に替えている
 長曾我部元親♂…28歳。幼少の愛子と元就を知る。
             現在では、島津の店の厨房を手伝っている
 片倉小十郎…Japan Airの名操縦士。愛子とは一緒に乗務することがある
 猿飛佐助♂…29歳。真田幸村に仕える上忍。
 (長野佐助) 島津の店で厨房を手伝いながら、ホールもこなす




「暑ぃな……」
 まだ六月だというのに、政宗は真っ赤な顔をして、氷の入ったグラスを額に押し当てた。
 見かねた元親が、氷嚢(ひょうのう)を作ってやろうか、と申し出たが、スタッフテーブルに腰掛けた政宗は、いや、大丈夫だ、と首を横に振る。だが、大丈夫そうではない。
「おい、あんまり無理すんじゃねぇぞ。そうでなくても、最近休めてなかったんだからよ」
 慶次の話によると、今年のゴールデンウィークは、店員が増えたのに、店は去年より忙しかったらしい。というのもつい先日、近くの大型ショッピングモールと運動公園に、今売り出し中のアイドルと元プロ野球選手がテレビの取材で訪れたとかで、その影響で連休中、界隈(かいわい)は大混雑を極めた。当然、近くの幹線道路は渋滞し、それを避けた地元の車で、島津の店の前を走る道は、通常では考えられないほどの交通量となった。
 そこへ車の客を見込んだ愛子が、店の駐車場では容量に限度があるからと、近所のコインパーキングとの提携を島津に提案し、駐車場も管理している自分のアパートの大家と、月極料金の値引きをかけあった。その成果もあり、店は過去最高の大入りとなった。
「愛子のお陰で大漁なのぁいいが、客をさばくのが追っつかねぇ。勝ち戦も連戦は辛ぇぜ」
 でも、男なら良い武将になったろうよ、と笑う元親に、政宗は視線を上げて苦笑する。
「そうだな……あいつは裏表がねぇから、女の戦はむかねぇだろうし」
 まるで独り言のように、ぽろりともれた政宗の心中に、へぇ、と元親は目を細める。
「あんたが女の感想を自分から言うたぁ、珍しいな。こりゃひと雨くるかもしれねぇ」
「おいおい、もう梅雨だぜ。ひと雨どころか、長雨が来んのが普通だろ」
 五月の終わりに台風のような大雨が降って以来、もう十日以上も晴天が続いていた。お陰で気温も湿度も上がるばかりで、雪国育ちの幸村や佐助も、寒いほうがマシだと、珍しく愚痴をこぼしている。体が丈夫でない政宗は、もはや愚痴を言うだけの気力もなかった。
「なぁ独眼竜。愛子がこの前、うちは狭いからクーラーが効き易いって、笑ってたんだけどよ、お前ぇさん、そっちに移ったらどうだ? そんな調子じゃ、真夏は死んじまうぜ」
「わざわざ石田のいる家に移る必要はねぇだろ。だったら風来坊の家にでも転がり込むさ」
「なら石田と交代すりゃいいじゃねぇか。こっちでの生活も三月(みつき)目だ。奴(やっこ)さん、愛子に影響されてだいぶ愛想も覚えたし、俺達と暮らしても大丈夫だろう」
 それによ、と周囲を気にしながら耳打ちした元親の情報に、政宗は思わず噴き出した。
「慶次の野郎、金がなくてクーラーがねぇんだとよ」

「かかかかかか片倉機長!」
 ホノルル発、羽田便。トイレに中座した片倉小十郎は、パイロットに食事を届けに来た愛子とすれ違った。入れ違いでコックピットから出てきた愛子に、小十郎は短く礼を言う。そして、操縦席に戻ろうとしたところで、一度通り過ぎた彼女に慌しく呼び止められた。
「どうした。何か問題でも?」
「い、いぇ、キャビンは通常通りです。特に何も問題は起こっていません。そうではなくて……仕事中に、こんなことをしてはいけないと、重々承知してはいるんですけど……」
 そう言って、愛子は静かに体の距離を詰めてきた。そして、周りを伺いながら、スカートの前を覆うエプロンの中に手を入れ、何やらごそごそと動かす。いったい何だ、と見ていると、頬を朱に染めた愛子は人目を忍びながら、小十郎の手にそっと触れてきた。
「よ、吉川くん、ちょっと……っ!」
 操縦席のすぐ目の前、しかもファーストクラスの乗客からも見える位置だ。小十郎にそのつもりがなくても、客の目にいかがわしく映ればクレームがくる。一般的な苦情ならいざ知らず、乗務中CAに手を出していた、などと言われたら、査問は免(まぬが)れない。
「これを、後で読んで頂けますか?」
「……?」
 小十郎の手に触れた彼女の指から、紙のような感触が手のひらに押し込まれてきた。
「乗務中に、本当に申し訳ありません! では、私はキャビンに戻ります!」
 ぶん、と風をきるほど、愛子が勢いよく頭を下げたので、思わず小十郎は、当たらないように避けてしまった。しかし、顔を真っ赤にして逃げるように去った愛子は、恐らくそのことに気付いていないだろう。あんな赤面した状態で持ち場のキャビンに戻れば、それはそれで変な噂が立ちそうな気がしてならないが、小十郎はひとまず、ひとりにしている副操縦士の元に戻ろうと、愛子から渡された紙を改めないまま、ポケットにしまった。
 それにしても、あの程度でうろたえるなど。機長として注意することも忘れて、触れた愛子の手の温もりに、年甲斐もなくどきりとしてしまった自分を、小十郎は笑った。
 果たしてその動揺は、査問を恐れてか、それとも、彼女に対してのときめきからか。
「隅に置けないですね、機長。吉川さん、結構人気なんですよ? 羨ましいなぁ……」
 コックピットに入り、左側のシートに腰掛けた小十郎に、副操縦士がにたりと笑う。
 聞かれていたか、と小十郎はため息をついた。確かに、女にモテることを目的として、この職種を目指す男も中にはいる。小十郎の上官にも、実は不純な動機が無くもなかった、と酒の席で白状する者がいたが、業界の外で言われているほど、現場は華やかではない。
「お前がいったい何を想像してるのかは知らんが、ひとつ忠告しておいてやる」
 まだ若い彼はもしかすると、女性関係が派手だった一部の上司に、変な夢を見させられているのだろうか。だがその上司も、狙っていたCA達を結局は断念し、今は婚活中だ。
「CAが狙うのは、芸能人だとか、上物の客だ。因みにパイロットはただのサラリーマンだ」
 客と出会えるCAとは違い、操縦席にこもりきりの会社員は人脈もなく、つまりモテない。
 堅実に生きろ。そう言外に諌めると後輩の彼は、そんなぁ、と盛大に肩を落とした。

 鎌倉の明月院(めいげついん)は、紫陽花(あじさい)の名所として、知られている。
『差出人:愛子 タイトル:お誘いです♪ 本文:鎌倉の明月院に行きませんか?(^▽^)』
 厨房にいた佐助のポケットが震え、幸村と共同で貸し与えられた携帯に、そのメールが届いたのは、六月も半ばにさしかかった平日の昼時だった。文末は「かすがが、佐助は誘わなくていい、と言ってたんですけど、また何かやらかしたんですか?」で終わっている。
「また、やらかした、って……俺様を何だと思ってるんだろうね、あのお嬢さんは」
 そうおちゃらけて見せる佐助の目の前では、幸村が政宗の前で縮こまっている。その主が、お嬢さん、の単語に反応してこちらを振り返るなり、助けてくれ、と目で訴えてきた。
「そんな目で俺様を見ないでくれる? どうしたいのか、あんたが一番分かってるでしょ」
 あんたも、俺様のこと何だと思ってるのよ、という突っ込みは、かろうじて飲み込む。
「そんなに難しい話はしてねぇだろ。愛子の家にアンタも住むか、って聞いてるだけだ」
 YesかNoで答えりゃいいだけだろうが、と政宗は苛立ちを見せる。
「そんな……愛子殿ご本人がおられぬ場で、某が斯様な大事を決めてしまっては……」
「何度も言わせるんじゃねぇ、真田。俺が聞いてるのは、お前が‘どうしたい’か、だ」
 俺達の要望を受け入れるかは、愛子が自由に決めればいい。そう続けた政宗の提案は、佐助から見ても至極簡潔で、しかも幸村の立場と想いをきちんと尊重していた。
 愛子と幸村が互いにどんな感情を抱いているか、政宗はむしろ本人達より分かっている。
 だが、暑さで体調を崩しがちになってきた政宗は、保険証の無い自分が医者の世話になる事態を懸念していた。もし全額自費負担で通院でもするようになれば、それこそ愛子や島津に多大な出費を強いることになる。そうでなくても、協調性のない三成を愛子ひとりにずっと押し付けている状態だ。これ以上負担をかければ、今度は愛子が倒れてしまう。
「なれど、潔癖で裏切りを嫌う石田殿とは場合が違う。某と政宗殿では、愛子殿が……」
 傷物になる、と出かかった言葉を、幸村は寸でのところで飲み込んだ。が、勘のいい政宗がそれを見破れぬはずはなく、ぎろりと睨んだ彼は、いつまでも煮え切らない幸村に、
「だったらアンタひとりでこの夏はくたばっちまえ。薬師の世話になろうがお前の自由だ」
 とうとう愛想を尽かして、厨房から出て行ってしまった。政宗殿、と力なく呼び止める主を見下ろした佐助は、やれやれ、と彼のお気に入りのひとつであるコーラを出してやる。
「何だかんだ言って、独眼竜なりに気を使ってるんだと思うよ。あんたも雪国生まれだし、そもそも、暑いの好き、とか言いながら結構暑がりでしょ。それに愛子だって、面倒臭い狂王みたいな堅物とふたり暮らしより、食べ物の好みとか色々似通ってるあんたのほうが楽しいだろうし、料理は元々独眼竜が好きなんだから、そこは彼に任せればいいし」
「佐助! 俺と政宗殿とでは……」
「また格上だ何だって言うと怒られるよ? じゃぁ聞くけど、俺様が格上のあんたとは、寝食は共にできないよ、って言ったらどうなのよ」
 あんただって、そういう遠慮は嫌だろ? そういうつもりで言ったのだが。
「それは……困るな。俺だけだと家が荒れる。俺はお前のように家のことが上手くできぬ」
「……あのさ、大将……俺様の使い道について、そろそろ考え直してくれないかな」
 馬鹿正直に困りだした彼を見、後は頼んだぜ、独眼竜、と佐助は主の丸投げを決意した。

「第5章-幸村編-⑨」へ

※↑で文字化けする方(携帯からお読みになる方など)は、カテゴリーから<「うたかたごころ」第5章-幸村編->→「第5章-幸村編-⑨」へお進み下さい。


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