大和ごころ
SSブログ

訪問者様へ<必読>

 ゲーム「戦国BASARA3・宴」を中心とした、同人系サイトです。
 あくまで、個人の趣味による作品を掲示しており、公式サイト・原作者作品・メーカー及びその他関連団体とは一切関係ありません。
 また、サイト内作品は、ネタバレ、同人要素、一部成人向け内容を含みます。
 苦手な方はお控えいただき、閲覧される方は全て自己責任でお願いします。
 尚、サイト内の全ての無断転載、複写、加工、2次配布等は禁止させていただきます。


※PCからの閲覧を推奨します

「Good-bye」(政宗+三成) [拍手SS再録置き場]

 拍手御礼用で作成した短編小説「Good-bye」です。
 舞台は現代。
 京都での大学生活を終えた政宗が、実家のある品川に引き上げてくる新幹線で、三成と出会います。
 ※BLではありません。
 今回初めて筆頭と三成を書いたので(しかも、よせばいいのに現代設定……)、しゃべり方とかキャラとか、色々ツッコミ所があるかとは思いますが、そこは笑って見逃してやって下さい(笑)
 最後に拍手を下さった方、ありがとうございました!




『Good-bye』


「Shit! またかよ」
 京都駅から上りの新幹線に乗り込んですぐ、ヘッドホンから音楽が消えた。
 大学在学中、政宗がずっと愛用していたポータブルオーディオ。その表示画面を見ると、電源が切れていた。HOLDしてあるので、電源ボタンが誤って押されたわけではない。
 もう一度、電源ボタンを長押しする。
 ── Hello! Call me?
 青く光るバックライトに起動時の表示が出た。それが消えると、普段なら最後に聞いていた音楽のタイトルが表示される。が、画面は何故か真っ白になった。そのまま少し様子を見ていたが、何の表示も出ないまま、そのうちバックライトも消えてしまった。
「そろそろ寿命か……」
 これは4年前の春、高校卒業の時に、政宗の長年の家庭教師だった小十郎が、大学の合格祝いにくれた物だ。その当時は、世界最軽量で200曲も入るうえ(最近、親友の元親が買った物は16000曲も入るらしいが)、タイトルに漢字も入れられる優れ物だった。
 通学時は勿論、バイトの休憩時間や家で勉強するときもこれで音楽を聴いていた政宗は、毎日バッテリーがエンプティになるまでこれを酷使していた。それでよく4年ももったものだと、寧ろ褒めてやるべきだろう。
 しかし、こういう日に限って乗車した新幹線は「ひかり」。下車駅の品川まで、あと2時間以上もある。普段は停車駅の少ない「のぞみ」を利用しているのだが、前後便ともすでに満席。毎年二月に帰省していた政宗は、三月の京都の集客力をなめていた。
 仕方がないので、政宗は携帯電話を取り出し、充電用差込口に変換アダプターを差してヘッドホンに繋ぎ、そっちで音楽を聴くことにした。ダウンロードしてあるのはたったの5曲。1時間も聞いていたらすぐに飽きてしまいそうだ。
「おい、聴くなら音を小さくしろ」
 再生ボタンにタッチしようとした時、隣に座る男が声をかけてきた。
 確か米原から乗ってきた奴だったか、ストレートに尖った銀髪の若いサラリーマンが、長い脚を組んでこちらを睨んでいる。
「Ah? まだ音出してねぇだろ」
「先ほど貴様のヘッドホンから、耳障りな音楽が私の耳にまで聞こえていた」
 綺麗な顔立ちをしてはいたが、いかにも神経質そうな、顔色の悪い男だった。
「そいつは悪かったな。気をつける」
 そう言って、気を取り直し、再生ボタンをタッチした。
 電話機とはとても思えないような高音質なサウンドが、政宗の耳を擽る。
 しかし、携帯に入っているのは、人からプレゼントされた曲ばかり。気に入らないわけではないが、政宗好みのパワフルな曲ではなかった。好みの近い元親のチョイスでさえ、ちょっと落ち着いた感じのサウンドで、新幹線の車窓の快速な景色にはちょっと物足りない。
「おい、音量を下げろ」
 隣の男がまた声をかけてきた。政宗は大きく嘆息してヘッドホンを外し、念のため自分の胸でスピーカーを塞いで、音の洩れ具合を確かめてみる。微かにシャシャンという音は聞こえるが、胸と耳の距離でこの小ささだ。隣の男の耳には殆ど聞こえないはずだが。
「アンタ、ちょっと神経質すぎやしねぇか」
「公共の乗り物で、雑音を撒き散らす貴様の無神経さは無罪放免か」
 雑音。流石の政宗もこれにはカチンときた。今聞いているこれは確かに自分も好みではないが、友人らが良かれと薦めて自分に送ってくれた曲である。
「おい、こっちのは俺のChoiceじゃねぇんだ。雑音とは聞き捨てならねぇな」
 普段自分が好んで聞いている曲は確かに賛否両論だが、少なくとも元親らのセンスは騒音公害とは程遠い。こんな小さなボリュームで音洩れの容疑をかけられたうえ、元親らの趣味まで貶(けな)されたのだ。これで穏やかでいられるほど、政宗はお人好しじゃない。
「さっきのは残念ながら壊れたんでね。あっちの曲で、もうアンタに迷惑かける心配もねぇ。それに、こっちのVolumeだってちゃんと落としてた。これ以上は俺の権利の侵害だ」
 ヘッドホンを首にかけて、政宗は食って掛かる。しかし、全く怯む様子の無い男は、突然意外なことを言い出した。
「どういう症状だ」
「……What?」
 症状? 症状って俺のか?
 一瞬、馬鹿にしてんのか、と思った政宗だったが、男の鋭い目が先ほど荷物にしまったポータブルオーディオのほうを見ているので、あぁ何だ、そっちか、と合点がいった。
「電源が入らなくなった。最近ちょくちょく勝手に落ちるようにはなってたんだがな。さっきまた落ちて、電源入れたらfreezeして、それでそのまま落ちて、それっきりだ」
 オーディオを鞄から再び取り出して男に手渡すと、お手上げ、と政宗は肩をすくめた。
 男は電源ボタンを押した後、本体をひっくり返して入っていた単4電池を取り出し、自分の手持ちの物と差し替えた。やはり反応は無い。
 すると今度は、棚に上げていたバッグを落ろして、随分と種類の豊富なドライバーセットを取り出した。黙々と慣れた手つきで分解し、揺れる社内で本格的な作業を始めた。
「おい、そこまでしてくんなくてもいいぜ」
 だんだん気を使い始めた政宗には目もくれず、半導体をひと通り調べた終えた男は、分解時に把握した設計図が既に頭に入っているか、細かな部品を簡単に組み立て直してしまった。そして、元通りになったオーディオを政宗に返すと、買い直せ、と短く言った。
「手に入りにくい部品だ。修理に出せば最低2万、運が悪ければ3万だ」
 それでは、元親が買った最新モデルの価格と変わらない。1つ下のランクの容量の物を買えば、下手したら釣りが返ってくる値段だ。しかし、だ。
「3万出せば、直せねぇことはねぇんだな」
 そう言って笑った政宗の顔を、男は怪訝な表情で見返した。
「何故、そのモデルにこだわる」
「モデルにこだわってるわけじゃねぇよ。こいつは俺の恩師から貰った精神安定剤みてぇなもんだ。それに、今はもう、こいつは恋人同然なんでね、手放せねぇよ」
 大学在学中のたった4年間とはいえ、孤独な毎日にほぼ24時間連れ添ってくれたオーディオだ。小十郎がくれた、という部分を抜きにしても、壊れたからじゃぁ可燃ゴミ、とすぐに割り切れるほど、もはや軽い存在ではない。
 その恋人の死の宣告。やはり、やりきれない気持ちになるのは仕方がないではないか。政宗は、大丈夫だ、直してやるよと、呟いて無意識にもう一度電源ボタンを押した。
 すると、先ほどまで全く反応がなかった液晶が、眩しく光り、
 ── Good-bye。
 そう最後に表示して、また電源が落ちた。
「……そんな……」
 政宗は、それ以上の言葉が出なかった。
 まるで、自分に別れを言うために、最後の力を振り絞って電源が入ったようだった。こんな精密機器にも、愛情をかけて接していると、魂が宿ってしまうものなのか。
 政宗はこういう状況に弱い。野菜をいちいち擬人化して語る小十郎に随分と影響を受けたせいで、政宗も愛着の沸いた物を擬人化する傾向があり、その別れが非常に堪えるのだ。
 そんな政宗の切なげな左目をしばらく眺めていた男は、テーブルに広げた物を片付け始めると、先ほど下ろしたキャリーバッグから名詞を一枚取り出し、政宗に差し出した。
「もし修理に出すのであれば、ここへ連絡しろ」
 見ると、政宗の持っているオーディオメーカーのロゴが入った、精密機器修理を請け負う小田原工場の社員の名詞だった。
「こんな大会社の社員に、ご指名で修理頼むのは流石にまずいんじゃねぇのか」
「よく見ろ。所属は下請けだ。間違っても親会社に私宛の電話をかけてくれるな」
 そう言い捨てると、男は颯爽と上着を羽織り、下りる準備を始めた。気がつけば、あともう1,2分で小田原である。
「疲れてるところ悪かったな」
 フン、下らぬ、と呟いた男は、親切にしてくれた割に、最後まで愛想の欠片も無い。そんなことを思って苦笑するうちに、ふたりの乗った「ひかり」は小田原駅に到着した。
「じゃぁな。何処まで行くかは知らんが、せいぜい寝過ごすな」
 冷たい顔をしているくせして、意外にも優しい言葉を言い置いて去ろうとしている男の背に、政宗は不敵な笑みを浮かべて声を投げた。
「Ha! アンタも在来線でやらかさねぇようにな、石田さんよ」
 その政宗の言葉に露骨に顔をしかめた男──石田三成は、小田原のホームに下りると、出口のほうへと消えて行く。そして、そんな彼の姿を、政宗は車窓越しに見送った。


-END-



感想・リクエストお待ちしております♪


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

第1章⑤第1章⑥ ブログトップ

別館「姫ごころ」

BASARA外ジャンルサイト・別館「姫ごころ」はこちらから♪
史月の1次小説やイラストを掲載しております♪
姫ごころバナー.jpg

※「姫ごころ」サイトへと飛びます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。